話せるブログ 第11回 物語「妻を亡くした患者さんの決断(第3話)」 

この連載について
一人ひとりの答えが違う歯科医療。そんな中、話せる歯科医は、患者さんの言いなりでもなく、自分勝手でもない。科学的な根拠も大事だけど、ときに感覚やあいまいさを優先する。ではいったいどんな歯科医が話せる歯科医なのか? 私、内藤の経験や物語をとおして、話せる歯科医をひも解いていきます。ここには、これからの歯科医療における答えの決め方のヒントがあるはずです。

(前回のおさらい) 第2話へ

ある日のこと。
診療室ではいつものように
慌ただしく時間が流れていた。
そんななか、私は
受付から報告を受けた。

「先生、青杉さんから連絡があり、
また前歯のブリッジが外れたとのことですが、
今日診察できますか?」

ここ最近、
頻繁に前歯のブリッジが外れている。
そのたびに何とかくっつけてはいるのだが。
そろそろ限界かもしれない。

私はそう思いながら、
青杉さんの今の状態を想像し、
行うであろう処置と所要時間を考えて答える。

「今日は時間的におしているけど、
待ってくれるなら、今日診ますよ。」

当院では、予約制のため、
その状態にもよるが、
基本的には予約患者さんを優先的に診療することになっている。

痛みや腫れが激しかったり、
ぶつかって歯が折れたり、
ぐらぐらしている場合などは、
予約患者さんには申し訳ないが、
優先的に処置させて頂くこともある。
特に外傷の場合には、
治療するまでの時間が短いほど、
治る可能性が高い場合があるので
理解して頂きたいところである。

しかし青杉さんの場合には、
大体の状態が予想できており、

ある程度の時間も必要になる。
だから予約患者さんの合間か、

あるいは予約患者さんが終わった後での診療になってしまうということ。

本当に申し訳ないことに、
予約患者さんでもかなりお待たせすることが多いので、

急患での来院は何時になるか読めないことも多い。

「待つのは構わないので今日診てほしいそうです。」

午前診での予約患者さんの診察を
すべて終えた後、私は、
青杉さんの診察をすることになった。

診察してみると、
やはり状態が厳しい。
ブリッジを支えている歯がさらにかけている。
これではくっつけてもすぐに外れてしまう。
というより、もはやくっつけるのも無理だ。

「青杉さん、もう限界です。
前歯をちゃんと入れるためには、
全体的な治療を行った方が良いと思います。
かなり大掛かりな治療にはなりますが。」

上の前歯をきちんと入れるためには、
奥歯のかみ合わせも関係する。
特に、今回の青杉さんの場合には、
奥歯を含めた大きなブリッジになるため、
全体を含めた治療計画が必要になってくる。
治療方針にもよるが、
治療期間も相当かかる。
全体的に行う場合には、1年以上かかることが予想された。

「わかりました。できるだけ良いようにして下さい。
残りの人生を、しっかり咬んで食事できて、
見た目も良い状態でもう少し過ごして行きたいんです。」

青杉さんは、迷いのない表情でそう答えた。

あれ???

もう少し納得してもらうのに、
話し合いが必要だと思っていた私は、
驚いておもわず、
青杉さんに聞いてしまっていた。

「治療は最低限じゃなくて良いのですか?」

(次回に続く)

※ここでの物語はすべて実話に基づいていますが、登場する方々の氏名は仮名であり、個人が特定されないように配慮をしている点をご理解ください。

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