教えて内藤先生 第10回 「その歯にかぶせものを入れないのはなぜ?」

この連載について
歯科医と患者さんとの間にはギャップがある。それが不満や後悔につながることも多い。歯科医の内藤は、そのギャップを埋めるため週に一度、落ち着いて患者さんと話せる時間をつくることにした。するとそこに毎週訪れるようになった小学5年生のゆめは君。内藤とゆめは君。患者さんからのご質問やご意見をもとにした2人の気さくな会話から、歯科医の常識や日常がみえてくる。歯科医と患者さんのギャップを埋め、お互いに後悔のない歯科医療を選択するための情報が満載。


内藤先生
話せる歯科医

ゆめは君
辛口な小学校5年生

ゆめは君
かぶせものをしないって選択もありって言ってたね?(→第9回へ

内藤先生
うん。かぶせものをすることに何のメリットもない場合、あるいはデメリットが大きい場合にはしないという選択もありだね。

ゆめは君
で、前回話した患者さんの場合には、どんなことが考えられたの?

内藤先生
その患者さんの場合はね、左下一番奥の歯(第二大臼歯)のかぶせものが取れた状態だったんだよ。かぶせものを入れても何度も外れちゃうっていうんだよ。

ゆめは君
だからまたかぶせものを入れてもらいに来たんでしょ?

内藤先生
そうなんだけど、何度もすぐに外れるのを繰り返したってことは、そうなる原因があるんだよ。

ゆめは君
原因?

内藤先生
うん。そもそもこの歯がどういう状態だったかっていうと。こんな感じ。かぶせものが外れている左下の一番奥の歯(第二大臼歯)ね。

ゆめは君
かぶせものが入ってなくて歯の根っこだけの状態だよね?かぶせものを入れるべきって思うよね?

内藤先生
この歯だけ見たら、かぶせものを入れて歯をちゃんと作らなきゃって思うよね。でも咬み合わせ見たらこうだったんだよ。右は患者さんご自身の歯で咬み合っていて、左は今回かぶせものが取れているよね?上は写真、下にはそれぞれそこの部位のレントゲン写真をのせているよ。

ゆめは君
う~ん。分かりずらいけど。左の歯には、右の下の歯みたいな歯を入れるすきまがなさそうだね。

内藤先生
そうなんだよ。咬み合わせをみると、このままではかぶせものを入れるすきまが全くない。今の状態で上の歯と接触しているような感じだよね。

ゆめは君
じゃあ、かぶせを入れるすきまがないから入れられないってこと?

内藤先生
確かにこのままだと、すきまはないから入れられないし、この歯を削って、すきまをつくって入れても、すぐに外れる可能性はあるよね。外れやすいっていうのは、その歯の形が平で外れやすい形になっているってこともあるんだけど、そこに強い力がかかることも関係しているんだよ。

ゆめは君
強い力?

内藤先生
無理にかぶせものを入れることで、そのかぶせものが本来の顎の動きを邪魔してくることがあるんだよ。そうすると全体の咬み合わせも変わっちゃう。現にその患者さんは、かぶせものを入れてもらうと必ず全体の咬み合わせに違和感が出るっていうんだ。

ゆめは君
その歯のかぶせものが全体の咬み合わせに影響するの?

内藤先生
もちろん。顎の位置や動きも微妙に変化するよ。その人の生体に調和していないかぶせものだと、かぶせものを外すような強い力をがかかることが予想される。体にとって邪魔なものは排除しようとする感じかな?

ゆめは君
へえ。調和していないかぶせものだと患者さんは自分でそのかぶせものを外そうとするってこと?

内藤先生
そうだね、特に寝ているときに顎の生理的な動きを妨げるような場合には、かぶせものを外すようなすごい力がかかる可能性が高いね。

ゆめは君
う~ん。生体に調和とか顎の生理的な動きとか。何だか難しくなってきました~。

(次回へ続く)

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