この連載について
一人ひとりの答えが違う歯科医療。そんな中、話せる歯科医は、患者さんの言いなりでもなく、自分勝手でもない。科学的な根拠も大事だけど、ときに感覚やあいまいさを優先する。ではいったいどんな歯科医が話せる歯科医なのか? 私、内藤の経験や物語をとおして、話せる歯科医をひも解いていきます。ここには、これからの歯科医療における答えの決め方のヒントがあるはずです。
多くの人達にとって、
歯科医院というのは
どんなイメージがあるでしょうか?
自分自身、
この業界に入ってからもう長くなるので、
歯科医療を良く知らなかったときに
どんなイメージを持っていたか
思い出せなくなっています。
その時点で、自分と患者さんの間には
ギャップが生まれていると思ったので、
歯科医師になる前にどう感じていたか、
思い出すことにしました。
思い出せるのは、子供の頃。
近所の歯科医院に通っていた覚えがあります。
歯が痛い、
歯肉が膿んで腫れてきた、
歯をぶつけてけがをした、
そんなことがきっかけで
親に連れて行かれた覚えがあります。
そのときの記憶をたどると・・・。
嫌な暗い気持ちで歯科医院の駐車場に着く。
歯科医院に入ると、スリッパに履き替える。
受付けの人に診察券を出し待つ。
薄暗く狭い待合室。
そこにはいつも多くの人が待っている。
その人たちは次から次へ呼ばれ診療室に入る。
かなり待った後、自分の名前が呼ばれる。
「内藤さん、どうぞ~」
診療室の椅子に座る。
まだ先生は来ない。
なんだか近くから先生の声だけは聞こえる。
「今日何されるのかな?もうすぐ来るかな?」
なんて思いながら不安な気持ちで待つ。
その待っている時間もかなり長い。
ようやく先生がくる。
軽いあいさつをして、
すぐに横にさせられ口を開ける。
そのままよくわからず治療を受ける。
何やら先生は自分の頭の上でしゃべっている。
何言っているのか全くわからない。
とにかく早く終わるの必死で待つ。
終わったらほっとしてそそくさと帰る。
今日何をされたのかもわからない。でも、
「もう今日で来なくて良いのかな?」
そればかりを期待し待合に戻る。
受付けの人から会計で呼ばれる。
「1週間後にまたきてくださいね。」
また来ないといけないことがわかり愕然として帰る。
思い出してみると、
できたら行きたくない、
できるだけ日常から
かけ離れていてほしい場所。
それが歯科医院だったような気がします。
多くの人たちにとって
今でもそうなのかもしれません。
でも、それでは歯科医療の良さが
全く出ていないと感じます。
悪い面ばっかりが出ている。
それではとてももったいない。
自分がこの業界に入ったから
良くわかりました。
歯科医療、歯科医院を
もっとうまく使えば、
ものすごく健康に、
そして人生にプラスになる。
でも普通の人はそれが全く理解できない。
当然だと思います。
だって自分も歯科医療をちゃんと勉強して
初めてわかってきたことですから。
昔は、医療にかかる状況が続くというのは、
病的で良くない状況だという
概念があったようですが、
今では予防の概念がかなり浸透し、
日常的に歯科医院に通院する人たちも
徐々に増えてきました。
ただまだまだそんな人たちは少数にすぎません。
これからの歯科医院というのは
冒頭で述べたような、
嫌だけど行かなければならない、
日常からできるだけ遠ざけたい、
マイナスをゼロに戻す場というより、
人生をより健康的にするというような
もう少し前向きな場に
変わっていくべきだと思います。
その人の日常にちょうど良く
溶け込むような形で。
そのためには、まず、
歯科医院と患者さんが
安心して関われることが大事です。
安心できる関わりがあるから、
患者さんは前向きな気持ちに
なることができますし、
患者さんの日常に溶け込むことができます。
そして安心できる関わりがあるからこそ、
歯科医師のスキルも知識も活きてきます。
そうなれば徐々に、
歯科医院のイメージや存在意義が
変わってくるのではないでしょうか。
(次回へ続く)
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