話せるブログ 第82回 感性&思考「歯科医師の役割をつくり直す」

この連載について
一人ひとりの答えが違う歯科医療。そんな中、話せる歯科医は、患者さんの言いなりでもなく、自分勝手でもない。科学的な根拠も大事だけど、ときに感覚やあいまいさを優先する。ではいったいどんな歯科医が話せる歯科医なのか? 私、内藤の経験や物語をとおして、話せる歯科医をひも解いていきます。ここには、これからの歯科医療における答えの決め方のヒントがあるはずです。

当たり前のことですが、
歯科医師になろうと思ったら、
歯科医師の免許を取らなければなりません。
歯科医師の免許を取るためには、
歯学部のある大学を出なければなりません。
歯学部のある大学を出るためには、
歯学部のある大学に入学しなければなりません。

大学に入学する年齢としては
18歳~20歳くらいの人が多いでしょうか。
大学1年生は、現役で入学すると18歳、
この年齢が一番多いですが、
1年~2年浪人している人は結構多いですよね。
3年以上となると急に少くなる印象です。

となると、この18歳~20歳くらいで、
自分が歯科医師になることを決めた人たちが
歯科医師になっているということです。
おそらくこの中には、
明確に歯科医師になりたいと思っている人、
親が歯科医師だから当たり前に
自分も歯科医師になるものだと思っている人、
自分の学力で行けるところを選んだ人など、
いろんな人がいると思います。

どちらかというと、
歯科医師の仕事を明確に理解して、
歯科医師をやりたいと思っている人のほうが、
めずらしいような気がします。
だから自分に向いている仕事かどうかも
よくわかっていないことがほとんどだと思います。
それに自分のことも
よくわかっていないことも多いと思います。

自分がやりたいかどうか、
自分に向いているかどうか、
そんなことはよくわからないけど、
なんとなく、学校を出て、免許をもったら
それなりにやっていけるだろう。
でも今は歯科医師も過剰で競争が激しいから、
やっていけるかどうか漠然とした不安は抱えている。
そんな感じでしょうか。

何が言いたいのかというと、
たぶん実際に歯科医師になるための勉強をしたり、
あるいは歯科医師になってから、
自分が歯科医師に向いていないかもと
感じる人も多いのではないかということなんです。
いやそう感じる人が多くて当然だと思うのです。
大学に入る前の18歳~20歳の時点で、
自分のことや歯科医師の仕事のことを
深く理解している人のほうが珍しいと思うからです。

私もそうだったんです。
いったん別な仕事をしてから、
歯科医師になりたいと思って、
歯学部に入りましたが、
それでも、今になって思うのは、
自分のこと、歯科医師の仕事のこと、
全然理解していたわけではありませんでした。

だから正直、実際に歯科医療の勉強をして
戸惑うことが多かったです。
自分からしたら違和感だらけ、
しかも競争が激しいと言われている業界で
自分が本当にこの仕事をやっていけるか、
やっていくべきなのか、
自分に向いてないかもしれない、
そんな疑問や不安もありました。

だから結構悩みました。
魅力的に見えたこの業界だったけど、
自分には合っていないのか、
この仕事を生涯の仕事とできるのか、
自分がやる意味があるのか、とか。
さらに、
自分は何がしたいのか?
どうなったら気持ちがよいの?
何ができるの?できないの?
何が好きなの?嫌いなの?

そうやってどんどん自分に疑問を
ぶつけていきました。
ただそうしているうちに、
自分がどんな人間なのかが
少しずつわかってきました。

自分のことを理解することって
すごく難しいことでしたね。
自分を理解するために、
他人と関わることも大事だと思います。
自分だけを見ていては
わからないことありますので。
時間がかかることでもありました。

でもそうやって自分のことを
掘り下げると、自分にできることや
提供できる価値も見えてきたんです。

そしてその部分と
歯科医師の仕事との接点を考えたとき、

今度は自分の歯科医師としての
役割や価値が見えてきたのです。
それが見えてきてからは、
歯科医師の仕事がとても楽になりました。
楽になったというのは、
忙しくなくなったとかではなく、
自分に合った形でやれていて、
それが人から求められるニーズと
マッチしている感覚ができたからです。

大学で歯科医師になるための勉強をして、
とりあえず歯科医師になる。
与えられた選択肢の中から
良さそうなものを選んで進んでいく。
このような進み方で、
うまくいく人も多いとは思います。

でももし今の環境や選択肢に
違和感やしんどさのある歯科医師は、
まずは自分自身との対話を通して、
自分自身を深堀していくステップを
最初に行うことをおすすめしたいですね。
そこから自分に合う歯科医師の役割を
つくり直せば良いのです。

(次回へ続く)

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