話せるブログ 第4回 物語「治療は必要ないと怒る患者さん(第4話)」

この連載について
一人ひとりの答えが違う歯科医療。そんな中、話せる歯科医は、患者さんの言いなりでもなく、自分勝手でもない。科学的な根拠も大事だけど、ときに感覚やあいまいさを優先する。ではいったいどんな歯科医が話せる歯科医なのか? 私、内藤の経験や物語をとおして、話せる歯科医をひも解いていきます。ここには、これからの歯科医療における答えの決め方のヒントがあるはずです。

(前回のおさらい) 第3話へ

舌圧検査を行い、
舌のトレーニングをお伝えしてから
1か月後くらいに
私たちは村田さんのご自宅に伺った。

舌圧が低い人ほど、
飲み込む機能が弱かったり、
将来死亡する確率が高かったりと、
舌圧は、血圧と同じように、
その方の健康状態を評価するために
有効な指標になることがわかっている。

村田さんは舌圧が
健常な方の半分以下。
だから、舌圧を上げるために
舌のトレーニングをご提案し、
この1か月間
やって頂くようにしたのだった。

私たちが、
村田さんのご自宅に着くなり、
娘さんが、嬉しそうに
お話してくれた。

「この前、近くの居酒屋で
クラッカーをむせずに
食べることができたんです。
しかも最近、周りの人から
滑舌が良くなったとも言われるんです。
あ、お見せしますね。
これがその居酒屋でとった写真です。」

そこには、ご家族とともに
嬉しそうだけど
ちょっと照れているようにもみえる
なんともいえない
やわらかい表情をした村田さんが
写っていた。

村田さんは、
私たちがお伝えした
舌のトレーニングを毎日
頑張ってくれており、
目に見えてその成果を
感じることができた。

「本当にがんばられましたね。
とても成果が出ています。」

わたしがそう村田さんに伝えると、
さきほど娘さんに
写真で見せていただいたような
表情の村田さんがそこにいたので、
私も一安心していた。

ただ私もご家族も
気になっていることがあった。
それは、前歯を
抜いたままの状態にしていること。

その両隣の歯も虫歯でかけている状態。

村田さんご本人は、
「もう先が短いからしないで良い!」
と治療は拒否されていたが、
ご家族からはなんとか
前歯を入れてあげられないだろうかと
ご相談を受けていた。

元医師で、威厳のある村田さん。
そんな村田さんだから、
ご家族はいつまでも
かっこよくいて欲しいと
願っていたのだ。

私は、そんなご家族の想いを感じ、
娘さんに見せて頂いた写真に写った

村田さんの何とも言えない表情を
思い返していた。

そして次の瞬間、

「今度は、前歯を見せた
素敵な笑顔で写真を撮りましょう。」

舌のトレーニングがうまくいき
調子に乗った私は、
娘さんに
そうご提案していた。

間違いなく、
村田さんご本人には
かなりのお叱りを受けながらの
治療になるにも関わらず・・・。

(次回に続く)

※ここでの物語はすべて実話に基づいていますが、登場する方々の氏名は仮名であり、個人が特定されないように配慮をしている点をご理解ください。

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