話せるブログ 第2回 物語「治療は必要ないと怒る患者さん(第2話)」

この連載について
一人ひとりの答えが違う歯科医療。そんな中、話せる歯科医は、患者さんの言いなりでもなく、自分勝手でもない。科学的な根拠も大事だけど、ときに感覚やあいまいさを優先する。ではいったいどんな歯科医が話せる歯科医なのか? 私、内藤の経験や物語をとおして、話せる歯科医をひも解いていきます。ここには、これからの歯科医療における答えの決め方のヒントがあるはずです。

(前回のお話) 第1話へ

この患者さんは元医師。
そこでわたしはまず、
どんな医師だったのか
ということを
お聞きすることから始めた。

ただそれも簡単なことではなかった。
いつも私達が伺う時間帯には、
相撲のテレビ中継がされており、
相撲が大好きな村田さんは、
それを真剣な眼差しで観ている。
だからそれを邪魔しないように、
話しかけるタイミングを見計らいながら。

ときおり、タイミングを間違えて
お叱りを受けることも。
お話しや診療が結局できずに、
ただ相撲のテレビ中継を
一緒に観て帰るという時もあった。

ただそうこうしているうちに、
だんだん自分がやってきたことや、
どんなお知り合いがいたのかなど、

村田さんがお話をしてくれるようになってきた。
ゴルフもかなりの腕前だったらしく、
かなりストイックな方だということもわかった。

お話の中で、
村田さんのお友達の一人が、
私の出身大学の教授を
されていたこともわかり、

ささいなことかもしれないが、
そのことが
少し親近感を持っていただけたのか
話をしていただけるきっかけになったと思う。

お話をお聞きしているうちに、
なんで口腔のケアを
しなければならないのかという
私の話に耳を傾けて
いただけるようになってきた。

元医師の方ということもあり、
その意味を理解されると、
仕方ないなという感じで、
口腔のケアを
させて頂けるようになった。

もちろん、
ちょっとでも痛かったりすると、
手が飛んできそうなほど
お叱りを受けながらではあったが。

それでも何とか、
定期的な口腔のケアを

行わせていただけるようになり、
それからというもの、
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)
になることもなく、

経過はよかったが、
1年くらいが過ぎたあたりに、
私たちは村田さんが入院した
という知らせを受けることになった。

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)
の疑いがあるとのこと。

さいわい、
短期間で退院されたが、
退院後はあまり食欲もなく、
形のあるものを
食べなくなってしまったという。

ご家族からは、
たまに
歯を痛がることがあるので、

歯が痛くて
食べれなくなっているのでしょうかと。

たしかに、
前歯がぐらぐらしていて、
奥歯で咬むことにも
支障が出ていたので、

このときは、
お叱りを受けながらも、

謝りながら
抜歯をさせてもらった。

その後から、
少しは食欲が戻ってきたものの、
やはり形のあるような食べ物は
あまり食べなくなってしまった。

「口の機能が
低下しているのかもしれない。」

(第3話へ続く)

※ここでの物語はすべて実話に基づいていますが、登場する方々の氏名は仮名であり、個人が特定されないように配慮をしている点をご理解ください。

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