教えて内藤先生 第51回 「歯科医と患者さんの当たり前はズレていく?」

この連載について
歯科医と患者さんとの間にはギャップがある。それが不満や後悔につながることも多い。歯科医の内藤は、そのギャップを埋めるため週に一度、落ち着いて患者さんと話せる時間をつくることにした。するとそこに毎週訪れるようになった小学5年生のゆめは君。内藤とゆめは君。患者さんからのご質問やご意見をもとにした2人の気さくな会話から、歯科医の想いや常識がみえてくる。歯科医と患者さんのギャップを埋め、お互いに後悔のない歯科医療を選択するための情報が満載。


内藤先生
話せる歯科医

ゆめは君
辛口な小学校5年生

ゆめは君
内藤先生って歯医者さんになる前は別なことしてたの?

内藤先生
一度大学を卒業して働いたんだけど、歯科医になりたいなって思ってまた大学に編入学したんだよ。

ゆめは君
へんにゅうがく?

内藤先生
1年生からじゃなくて、3年生に入学したんだよ。途中から入学したってこと。

ゆめは君
へえ、途中から入学することもできるんだね?

内藤先生
一度大学で学んでいるから、それで1、2年生の分は免除された感じ。ただ追加で受けなきゃいけない授業もあったから、3年生に入学した最初の年は、3年生の分と他に2年生の分を受けなきゃいけないから少し大変だったけどね。

ゆめは君
編入学っていうのも試験を受けて入るの?

内藤先生
そうだね。小論文と面接の試験があったよ。

ゆめは君
しょうろんぶん?

内藤先生
ある文章の内容を読んで、それについての内容を質問されて、自分の考えを800字の文章で書くような内容が確か2題出たような。

ゆめは君
へえ。夏休みに宿題で出る読書感想文みたいだね。どんな内容だったの?

内藤先生
たしか、医療は科学なのか?みたいなことを考えさせられたような。

ゆめは君
なんだかこむずかしい話だね。

内藤先生
そうだね。今思うと答えがはっきりしていないような問題だからね。

ゆめは君
どんなこと書いたの?

内藤先生
正直忘れました。当時自分がそれにどんなことを考えていたのか。その答案を見てみたいね。

ゆめは君
今とは違うと思う?

内藤先生
絶対違うと思うね。

ゆめは君
何でそう思うの?

内藤先生
たぶんその当時の方が、医療は科学的要素が強いと思っていたと思う。それに医療って明確な答えがあり、そしてそれを患者さんに与えるべきものだとも思っていたし。

ゆめは君
へえ。今は答えがないって良く言っているのにね。

内藤先生
たぶん理由はふたつあって、ひとつは、社会人1年目で、絶対的に経験値が少なかったっていうのはあるね。大学では結構一生懸命勉強したと思ってたんだけど、答えを教えてもらって覚えることばっかりやってたから。

ゆめは君
ふんふん。経験が少なくて勉強の仕方も間違っていたと。ふたつめは?

内藤先生
かしこくまとめたね。ふたつめとしては、そのとき自分が学んできたことが、医療の中でも科学的要素の強い検査というものだったから。科学的っていうのは、だれがやっても正しい値が再現されることね。検査ってそういものであってほしくない?

ゆめは君
そうだね。確かに検査するたびに、結果が変わってたら困るもんね。

内藤先生
しかも当時働いていた病院の部署は、検体を検査するところだった。あ、検体っていうと、人間の血液とか、尿とか便とかね。

ゆめは君
ふんふん。

内藤先生
検体の検査って、当時からかなり自動化されていたから、分析する器械やそこから出てくる数値と向き合うことになる。その値が正しく出ているかどうかをいつもチェックしている感じ。

ゆめは君
なんだかさっきからむずかしい話になってるは知ってる?

内藤先生
ごめん、ちょっとわかりにくい話になってるかな?

ゆめは君
まあ良いけど。じゃああんまり患者さんとは接してなかったってこと?

内藤先生
そうだね。だから患者さんという人について勉強するというより、正確な値を出すために必要なことや、その検査結果からどんな病気や問題点が考えられるのかという答えを探す勉強をしていた気がするね。

ゆめは君
歯医者さんになってから考えが変わってきたの?

内藤先生
そうだね。歯科医になってからだいぶ変わってきたと思う。治療方針に答えはないって思うようになったしね。それに医療の中でも歯科医療っていうのはまた特殊だなって思う。だから最初はすごい違和感があった。

ゆめは君
今は違和感ないの?

内藤先生
あることはある。でも大分少なくなった。ただ逆にそれにつれて患者さんとのギャップは大きくなってきているかもしれない。自分が当たり前と思うことが患者さんにとっての当たり前とどんどんズレてきているかも。

ゆめは君
どんなことでそれを感じるの?

内藤先生
まあいろいろあるけど長くなってきたからまた今度話すね。ただひとつだけ言うと、最初は違和感のあった人に内藤先生と呼ばれることすら当たり前になってしまってて、今は内藤さんと呼ばれる方が違和感を感じることがあるからね。

ゆめは君
それはどんどんズレているね。

(次回へ続く)

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