この連載について
歯科医と患者さんとの間にはギャップがある。それが不満や後悔につながることも多い。歯科医の内藤は、そのギャップを埋めるため週に一度、落ち着いて患者さんと話せる時間をつくることにした。するとそこに毎週訪れるようになった小学5年生のゆめは君。内藤とゆめは君。患者さんからのご質問やご意見をもとにした2人の気さくな会話から、歯科医の常識や日常がみえてくる。歯科医と患者さんのギャップを埋め、お互いに後悔のない歯科医療を選択するための情報が満載。
内藤先生
話せる歯科医
ゆめは君
辛口な小学校5年生
ボールを投げるとき、コントロールには自信あるね。野球でピッチャーやってるから。
うん。ピッチャーやりたい人って言われたから、「はい!」って手を上げたら自分だけだったから。
そうでしょ?球は遅いけど、コントロールは良いんだよ。
そっか。先生も小学校の頃野球部で、ピッチャーだったんだよ。同じく球は遅いけど、コントロールは良かった。
うん、今はやってないけどね。でも今度キャッチボールでもしよっか?
うん、いいよ。ところで何でそんなことを聞いてきたんだっけ?
あ、そうだよね。人それぞれ得意なことってあるなと思って。
この前職場で、ある歯科衛生士に口腔内写真を撮ってもらったんだ。
うん。口や歯の経過を比較していくための記録写真。歯や口の中を取るんだけどね。ちゃんと比較するためには、規格写真であることが大事なんだけどね。
撮ってもらったら、ピントがずれていたり、角度がいまいちだったり、全然規格写真になってなかったんだ。
そうだね。お世辞にもちゃんと撮れているとは言えなかった。だだね・・・。
顔写真を撮ることもあるんだけど、その写真に写っている患者さんの顔がとても素敵だったんだ。すごい自然な笑顔で。ふつうは皆、硬い表情になっちゃうもんなんだけど。
歯医者さんで写真撮られるとき、そんな良い笑顔にならないかもね。
そうなんだよ。それなのに、すごい良い笑顔の写真を撮っていた。
そう。言いたかったのはそういうこと。その歯科衛生士は、患者さんの良い笑顔を引き出すのが得意だった。
うん。それにね、そのスタッフは、フラワーアレンジメントとかも得意。でも決められたとおりに写真を撮るのは苦手。とてもアートな人だなって思った。
へえ。人それぞれ得意なことってあるんだね。内藤先生は、何が得意なの?
その人が最も後悔の少ない治療方針を一緒に決めていくこと。
あ、話せる歯科医だもんね。実際の治療については得意なことある?
どうだろう?歯の神経をできるだけ残すための治療ていうのは得意にしているかな。
そうだよ。虫歯が進行して深いと、歯の神経まで細菌が感染して、歯の神経を取る治療が必要になるんだよ。
歯の神経を取るってすごいね?それをすると良くないの?
うん。歯の神経をとっちゃうと、間違いなく歯の寿命は短くなるからね。
そうなんだ?じゃあ歯の神経はできるだけ取りたくないね。
うん、だから虫歯が深くても、できるだけ神経を残す治療をしているよ。それは得意かな。
(次回へ続く)
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