教えて内藤先生 第16回 「歯科医療者もそれぞれ得意なことがある」

この連載について
歯科医と患者さんとの間にはギャップがある。それが不満や後悔につながることも多い。歯科医の内藤は、そのギャップを埋めるため週に一度、落ち着いて患者さんと話せる時間をつくることにした。するとそこに毎週訪れるようになった小学5年生のゆめは君。内藤とゆめは君。患者さんからのご質問やご意見をもとにした2人の気さくな会話から、歯科医の常識や日常がみえてくる。歯科医と患者さんのギャップを埋め、お互いに後悔のない歯科医療を選択するための情報が満載。


内藤先生
話せる歯科医

ゆめは君
辛口な小学校5年生

内藤先生
ゆめは君は、得意なことってある?

ゆめは君
得意なこと?

内藤先生
そう、得意なこと。何でも良いよ。

ゆめは君
ボールを投げるとき、コントロールには自信あるね。野球でピッチャーやってるから。

内藤先生
へえ。すごいね。ピッチャーなんだ?

ゆめは君
うん、そだよ。立候補だけど。

内藤先生
立候補?

ゆめは君
うん。ピッチャーやりたい人って言われたから、「はい!」って手を上げたら自分だけだったから。

内藤先生
その姿勢は積極的で良いね。

ゆめは君
そうでしょ?球は遅いけど、コントロールは良いんだよ。

内藤先生
そっか。先生も小学校の頃野球部で、ピッチャーだったんだよ。同じく球は遅いけど、コントロールは良かった。

ゆめは君
そうなんだ?野球やってたんだ?

内藤先生
うん、今はやってないけどね。でも今度キャッチボールでもしよっか?

ゆめは君
うん、いいよ。ところで何でそんなことを聞いてきたんだっけ?

内藤先生
あ、そうだよね。人それぞれ得意なことってあるなと思って。

ゆめは君
ん?

内藤先生
この前職場で、ある歯科衛生士に口腔内写真を撮ってもらったんだ。

ゆめは君
こうくうないしゃしん?

内藤先生
うん。口や歯の経過を比較していくための記録写真。歯や口の中を取るんだけどね。ちゃんと比較するためには、規格写真であることが大事なんだけどね。

ゆめは君
それを歯科衛生士に撮ってもらったら?

内藤先生
撮ってもらったら、ピントがずれていたり、角度がいまいちだったり、全然規格写真になってなかったんだ。

ゆめは君
下手だったわけね。

内藤先生
そうだね。お世辞にもちゃんと撮れているとは言えなかった。だだね・・・。

ゆめは君
ただ?

内藤先生
顔写真を撮ることもあるんだけど、その写真に写っている患者さんの顔がとても素敵だったんだ。すごい自然な笑顔で。ふつうは皆、硬い表情になっちゃうもんなんだけど。

ゆめは君
歯医者さんで写真撮られるとき、そんな良い笑顔にならないかもね。

内藤先生
そうなんだよ。それなのに、すごい良い笑顔の写真を撮っていた。

ゆめは君
それも才能だね?

内藤先生
そう。言いたかったのはそういうこと。その歯科衛生士は、患者さんの良い笑顔を引き出すのが得意だった。

ゆめは君
それもすごいことだよね。

内藤先生
うん。それにね、そのスタッフは、フラワーアレンジメントとかも得意。でも決められたとおりに写真を撮るのは苦手。とてもアートな人だなって思った。

ゆめは君
へえ。人それぞれ得意なことってあるんだね。内藤先生は、何が得意なの?

内藤先生
その人が最も後悔の少ない治療方針を一緒に決めていくこと。

ゆめは君
あ、話せる歯科医だもんね。実際の治療については得意なことある?

内藤先生
どうだろう?歯の神経をできるだけ残すための治療ていうのは得意にしているかな。

ゆめは君
歯の神経を残す?

内藤先生
そうだよ。虫歯が進行して深いと、歯の神経まで細菌が感染して、歯の神経を取る治療が必要になるんだよ。

ゆめは君
歯の神経を取るってすごいね?それをすると良くないの?

内藤先生
うん。歯の神経をとっちゃうと、間違いなく歯の寿命は短くなるからね。

ゆめは君
そうなんだ?じゃあ歯の神経はできるだけ取りたくないね。

内藤先生
うん、だから虫歯が深くても、できるだけ神経を残す治療をしているよ。それは得意かな。

ゆめは君
へえ。ちゃんと治療してるんだね。

内藤先生
どゆ意味かね?

(次回へ続く)

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