話せるブログ 第75回 感性&思考「自分の歯科医療の軸となるもの」

この連載について
一人ひとりの答えが違う歯科医療。そんな中、話せる歯科医は、患者さんの言いなりでもなく、自分勝手でもない。科学的な根拠も大事だけど、ときに感覚やあいまいさを優先する。ではいったいどんな歯科医が話せる歯科医なのか? 私、内藤の経験や物語をとおして、話せる歯科医をひも解いていきます。ここには、これからの歯科医療における答えの決め方のヒントがあるはずです。

私は以前、臨床検査技師として
働いていましたが、
歯科医療が体の健康や
生活(人生)を良くするために
重要になるのではないかと考え、
歯科医になることを決めました。

ただ違う業界から来たからでしょうか、
同じ医療の中ではあっても、
歯科医療というものに、
とても違和感や不思議さを感じました。

まず、医療として何のために
行っているのかということが
とても見えずらいと感じました。
自分たちの行った行為が、
患者さんにとって、
どんな結果をもたらすのか。
それがあまり見えなかったのです。

歯科治療というのは、
ものづくりの要素が大きく、

きれいなものが入れば、
それなりに患者さんには
喜ばれる実感はありますが、
医療としてどのような結果を
出しているのかは
あまり良くわかりませんでした。

また、医療では当たり前に
行われる臨床検査も、
歯科医療にはあまりありませんでした。

検査というと、良く行われていたのは、
歯周病の検査である、歯周ポケット検査。

一般的な検査なので、
皆さんも一度は受けたことが
あるとは思います。
歯肉をチクチクっと
刺されるあれです。
歯周病治療は、この検査をしなければ

始まらないのですが、
正直、この検査には驚きました。

歯周ポケットの深さを測るために
細菌だらけで汚い環境の中で、
赤く腫れているような歯肉に、
血をだらだら出しながら、
短針を挿入していく行為。

もちろん、状況を判断するために、
有益な情報も与えてくれますが、
なかなか勇気がいる検査でした。

通常、一般的な歯科医院においては、
血液検査や尿検査など、
体の健康状態をみるような
検査を行うことはあまりありません。

体の健康状態をみるような指標がなければ、
歯科医療の結果が良くわからないのは
当然だとも感じます。

これだけ歯や口の中の問題と
体の健康が関係していると
言われている現在、
そのことを意識していない

歯科医はあまりいないかもしれませんが、
実際に結果として示すことが
できるかというと
そこまでできる歯科医は
まだ少ないのではないでしょうか。

これまで歯科医療は、
良く咬めるとか、
歯を残すとか、
そういうことを目的として、
行われていました。
それを目的として、
各治療技術は進歩してきましたし、
その一つ一つは間違いなく
意義のあるものだと感じています。

でも今は、歯科医療が、
人々の体の健康や生活(人生)に
どのような効果をもたらすのか、
その結果が求められています。
そこに向かっているプロセスも
求められています。

ただこれまでの歯科医療は、
良く咬めるとどうなるのか、

歯を残したらどうなるのか、
その先についてのコンセプトと、
そのプロセスをみるための指標を
持ち合わせていなかったようなのです。

これからは、
人々の体の健康や生活を良くする、
人生を良くするというコンセプトの中で、
これまで培われてきた歯科医療が
総動員されていく必要があると思います。

そして求められる
最終的な結果を出すためには、
そこに向かうプロセスを評価する
体の状態をみるような健康指標、
臨床検査指標の必要性が
高まっていくように思います。

私は、話せる歯科医として
歯科医療の治療方針に、
絶対的な一つの答えはないと思っています。
ただ歯科医として、
自分の軸は持っています。

その軸が、
できるだけ患者さんの体の健康や生活(人生)を
考えて歯科医療を実践することです。

その考えを軸に持ちながら、
その時々で、患者さんと話し合い
どんな歯科治療を選択するかを決めてきました。

その実践においてこれまで自分の中で
腑に落ちたこと、腑に落ちないこと、

色々とありますが、
自分が実際に歯科医として
感じたことを、
自分の言葉でこれからも
発信していきたいと思います。

(次回へ続く)

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