話せるブログ 第69回 感性&思考「現在地の確認に時間をかける」

この連載について
一人ひとりの答えが違う歯科医療。そんな中、話せる歯科医は、患者さんの言いなりでもなく、自分勝手でもない。科学的な根拠も大事だけど、ときに感覚やあいまいさを優先する。ではいったいどんな歯科医が話せる歯科医なのか? 私、内藤の経験や物語をとおして、話せる歯科医をひも解いていきます。ここには、これからの歯科医療における答えの決め方のヒントがあるはずです。

今の時代、
多くの患者さんは、
事前にネットで調べてから
来院されます。

たとえば、
虫歯治療でも、
痛くないとか、
できるだけ削らないとか、
神経を取らないとか、
そんなキーワードで
検索して調べて、
それを期待して来院される
ことも多いようです。

そんなふうに調べて
基礎知識をもって
来院される患者さんは
意識が高いので、
治療法についてとても
良く知っています。

ただそのような患者さんでも
自分自身の現状については、
良く知らない方が多いように
思います。

だから、
患者さんがやってほしい治療と、
その患者さんに歯科医が適切だと
思う治療にズレが生じることがあります。

そのような場合、
事前にちゃんとした
話し合いがなければ
仮に専門家からみて
治療方法が適切であったとしても
患者さんは、その歯科医に
不信感を持ってしまうようです。

治療としては
全然間違ったことを
していないのに

その治療方法に
患者さんが納得していない場合には
関係性が壊れてしまうのです。

「ちゃんと説明してもらえなかった」とか。
「説明もなく歯を削られた」とか。
そんな不満を
患者さんからけっこう聞きます。

歯科医も説明していない
わけではないのかもしれません。
ただそんな患者さんは理解も
納得もしていないのですね。

歯科医と患者さんの認識には
ズレが生じていることがある。

歯科医はそのことを
常に注意しておかなければなりません。
だからまず、
歯科医が治療法を提案するとき、
患者さんの現状の認識を
ちゃんと共有していることが
とても重要になります。

今、自分がどんな状況で、
どんな問題点があって、
なぜそうなってしまっているのかなど。

そのことを理解してはじめて、
何をすることが必要なのかが
わかってきます。
その手段を選ぶことにも
納得できます。

これは、
目的地に辿り着くための手段を
納得して選ぶための
現在地の確認と共有です。

現在地がわからなければ、
目的地までの距離や道筋も
わかりません。
だから目的にたどり着くための
手段も何が適切かがわかりません。

歩きなのか、自転車なのか、
車なのか、電車なのか、
新幹線なのか、飛行機なのか。

歩くのはしんどい。
だからタクシーで。

飛行機は恐いから
乗りたくない。
だから新幹線で。

手段を選ぶには
色んな理由があります。

そこで、
目的地にたどり着くための手段を
歯科医が勝手に選んだ時、
確かにそれが適切な手段だったとしても、
その方が望む手段とは違えば
不満になってしまいます。

ただ正直
歯科医の立場からすると
患者さんの現状と、
患者さんの要望が、
かなり乖離していると
感じることがあるんです。

「東京に行きたい。
できるだけ早く。
1~2時間くらいで。
でも乗り物酔いするから
できるだけ歩きたい。
飛行機は恐いから絶対いや。
費用も5千円くらいで。
何か良い方法ありませんか?
今、大阪にいます。」

そんなときは、
ドラえもんにお願いしてください。

私たち歯科医は、
魔法のような手段や
四次元ポケットを持っている
わけではありません。
最善の手段を一緒に

考える話し合いをしていきます。
そのために最初の
現状の確認と共有に
結構な時間と労力を
かけています。

(次回へ続く)

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