話せるブログ 第57回 感性&思考「歯科医の説明と言い訳」

この連載について
一人ひとりの答えが違う歯科医療。そんな中、話せる歯科医は、患者さんの言いなりでもなく、自分勝手でもない。科学的な根拠も大事だけど、ときに感覚やあいまいさを優先する。ではいったいどんな歯科医が話せる歯科医なのか? 私、内藤の経験や物語をとおして、話せる歯科医をひも解いていきます。ここには、これからの歯科医療における答えの決め方のヒントがあるはずです。

歯科医の間で言われること。
それは次のようなこと。

その治療方法を選ぶことによって、
将来的に起こる可能性のある
良くない事態を、

事前に患者さんに伝えるときは、
説明に聞こえるけど、
その事態が起こってからでは、
言い訳に聞こえてしまう。
だから、

できるだけ事前に患者さんには
予測できる事態は伝えておかないと
いけないということ。

恐らくほとんどの歯科医が、
事前に説明をしていない、
あるいは伝わっていなかった
ということで、
患者さんとの信頼関係が
崩れてしまった経験を
持っているのではないかと思います。

私自身もあります。
時間的制約などを理由に、
事前の説明がおろそかに
なっていたり、

自分が当たり前だと
思っていることが、

患者さんとズレていたり、
説明したと思っていても、
伝わっていなかったり。

また、しっかり説明したことは
伝わっていたとしても、
自分が予期できなかった事態が
起こることもあります。

歯科医の立場からして、
できる限りのことを尽くして、
何とか治療をしたとしても、
また悪くなってしまうときがあります。
何も説明がなければ、
患者さんからしたら、
治してもらったからもう大丈夫と
思うのは当然だと思います。

もしまた悪くなってしまったとき、
なんで治療したのに
また悪くなったのだろうかと。

そこで歯科医に聞いてみると、
歯科医からは、いやいや
以前こういう状態だったから、

これは起こりえることですよ
と言われても納得できないことも
あるかと思います。

歯科医の立場からすると、
当たり前のことでも、
患者さんにとっては
当たり前ではないことが
ありますので、事前に
すり合わせる話し合いが無いと、

こんなことは良く起こりえます。

ひどいときは、歯科医側は、
良い治療をしたなあと
思っているのに、

患者さんはむしろ
不満を持っている

なんてこともあるのですから。

こういったギャップを
できるだけ少なくするために、
事前に認識をすり合わせる
話し合いをすることは
とても重要なのですが、
これがとても難しいのです。

限られた時間の中で、
その患者さんに何をどこまで
どういう形で伝えるのが良いのか。

すべてを正確に伝えようと
おもったら、複雑になってしまって、

患者さんからしたら
すごくわかりにくくなってしまいます。

でもわかりやすく
伝えようとすると、

正確性は落ちてしまいます。
伝わるけど、
歯科医側からしたら

不十分なのではないかと
不安になります。
だって歯科医は、
何か悪い事態が
起こってしまってからでは、

言い訳になってしまうと
思っているのですから。

だから何か軸を持たないといけません。

患者さんが何を求めていて、
何を心配しているのか。
どんなメリットが手に入れたくて、
どんなデメリットは受け入れ難いのか。

わたしは、このような患者さんの
立場や思いを軸にして

話し合いを始めることを
心がけています。

もしそうではなく、
歯科医の立場や思いを軸に
話し合いを始めると、

患者さんからしたら、
話がややこしくてわかりにくい上に、

何だか最初から言い訳に聞こえる
事前説明をすることに
なってしまいます。

それでは最初から
患者さんとの信頼関係は
成り立ちませんから。

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