教えて内藤先生 第77回 「削らない治療は患者さんの努力が相当必要?」

この連載について
歯科医と患者さんとの間にはギャップがある。それが不満や後悔につながることも多い。歯科医の内藤は、そのギャップを埋めるため週に一度、落ち着いて患者さんと話せる時間をつくることにした。するとそこに毎週訪れるようになった小学5年生のゆめは君。内藤とゆめは君。患者さんからのご質問やご意見をもとにした2人の気さくな会話から、歯科医の想いや常識がみえてくる。歯科医と患者さんのギャップを埋め、お互いに後悔のない歯科医療を選択するための情報が満載。


内藤先生
話せる歯科医

ゆめは君
辛口な小学校5年生

内藤先生
できるだけ歯を削られたくないって訴える患者さんて多いんだけどね。

ゆめは君
そりゃそうだよ。痛いの嫌だし。

内藤先生
歯を削るって確かに不思議な行為だよね。

ゆめは君
歯医者さんでもそう思うの?

内藤先生
歯科医だって別に歯を削りたいわけじゃないからね。もし削らずに治すことができるのならそりゃ削りたくないよね。

ゆめは君
そうなんだ?

内藤先生
いやいやだって基本的に嫌がられるし。歯を削るって。

ゆめは君
そっか。でも削らないでも治すことって可能なの?

内藤先生
全く削らずに完全に元通りに治るっていうのは、かなり初期の虫歯だよ。

ゆめは君
じゃあ基本的に元に戻るってことはない?

内藤先生
穴になっちゃった虫歯が元に戻るってことはない。

ゆめは君
じゃあ削らない治療っていうのは、相当早い段階じゃないと無理なの?

内藤先生
元には戻らないけど、進行させないことはできる。でもそれにはかなり患者さんの努力も必要になるんだよ。

ゆめは君
患者さんの努力が必要?

内藤先生
そう。虫歯を進行させないためにはその原因をコントロールする必要があるからね。

ゆめは君
虫歯の原因て?

内藤先生
虫歯菌が糖を分解して出す酸。難しい?

ゆめは君
いや何回か聞いたことがあるから大丈夫。

内藤先生
良かった。虫歯菌にもいろいろ種類がいるし、糖だっていろいろあるんだよ。

ゆめは君
え?それは話が難しくなってきそうな予感。

内藤先生
いや細かい話は良いんだけど、悪い虫歯菌と、糖の中でも砂糖の組み合わせがとても悪いってことを言いたいんだ。

ゆめは君
じゃあその2つが無かったら虫歯は進行しない?

内藤先生
その通り。この2つが完全に除去できたら虫歯はかなり防げるし、進行もかなり止められる。

ゆめは君
おお!

内藤先生
でもね、単純な話なんだけど、この2つを除去することが難しいって話なんだよ。ちなみに今の世の中で全く砂糖を取らないってできると思う?

ゆめは君
え?甘いお菓子とかをがまんすれば良いんでしょ?

内藤先生
いや砂糖ってあらゆる食品に入っているからね。完全にカットすることはかなり難しい。

ゆめは君
そうなんだ?

内藤先生
虫歯菌についてもそうで、一生懸命自分で歯を磨いていても、どうしても虫歯菌が残りやすい場所ができていたらなかなか自分で虫歯菌をコントロールできない。だから歯科医が削ったり詰めたりして、歯磨きがちゃんとできるような形にしているんだよ。

ゆめは君
なるほど。

内藤先生
だから虫歯を削らずに本気で進行させないようにしようと思ったら、この虫歯菌や砂糖のコントロールをする努力が必要になるってこと。虫歯になったけど削られたくないっていうのは、やせたいけどたくさん食べたいって言っているようなもの。

ゆめは君
でも削って治療するとしてもその努力って大事でしょ?

内藤先生
さすがその通り。その努力をしている上で治療を行えば、治療結果も良いし、長く良い状態が保てる。

(次回へ続く)

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