この連載について
歯科医と患者さんとの間にはギャップがある。それが不満や後悔につながることも多い。歯科医の内藤は、そのギャップを埋めるため週に一度、落ち着いて患者さんと話せる時間をつくることにした。するとそこに毎週訪れるようになった小学5年生のゆめは君。内藤とゆめは君。患者さんからのご質問やご意見をもとにした2人の気さくな会話から、歯科医の想いや常識がみえてくる。歯科医と患者さんのギャップを埋め、お互いに後悔のない歯科医療を選択するための情報が満載。
内藤先生
話せる歯科医
ゆめは君
辛口な小学校5年生
このまえ、あるお店でお客さんと店員さんがけんかしていたんだけどね。
そう。そのお店で買おうと思って店員さんに注文してたら、突然店員さんにどなりこんできた人がいてね。
そのお店は○○丼みたいなどんぶり物も売っているお店なんだけどね。
そのどんぶりにソースがかかってないって。こんなんでどうやってごはん食べれるのかって。
いやそれなら店員さんは、「すみません」てあやまって、ソースをかけたと思うんだよ。
そうみたい。味つけをしていないわけじゃないけど、素材の味を楽しんでもらうようにそういう味つけにしているんだって言ってた。
そういうどんぶりなんだってことね。それで?お客さんは納得したの?
もちろんしなかった。こんな味うすくてどうやって食えるのかって怒りがおさまらず。店員さんに、「あんたじゃあかん!責任者に連絡しろ!」って。
それでその怒っているお客さんは、とうとう先生に話しかけてきたんだよ。「あんたもこれみてそう思うやろ!」って。
いや、お店がそういうこだわりで出してて、そのどんぶりのメニュー表に写真ものってたから、そういうものなんじゃないですかって。
そうだね。そんなに違ってなかったし、そのお店で自分も良く買ってて、その店員さんはとても良くしてくれてるし、いきなり怒ってきたその人の味方はできないよね~。
いや怒ってたよ。「とにかくここにソースかけろ!」って。でもそこにソースは置いてなかったみたいで。
そうだね。でもそれでそこまで怒れるパワーはすごいね。それに、その人は絶対に自分が正しいと思って言っている。だからたぶん帰ってからそのお店の文句を言っているだろうね。
たしかにね。自分が間違ってると思ってたらそんなに怒れないよね?でも今日は歯の話とは全然関係ないのね?
あ、そう?関係なくもないよ。そういう人が患者さんだった場合にどうコミュニケーションをとったら良いかなって考えたりする。
たまにあるよね。たとえば、入れ歯をつくって、「こんなんで食べれるかー!」とか、「治療したのにまだ痛いじゃないか!」みたいな。
ある程度、その患者さんが困ったってことに理解は示して、どうやったらその人が満足するかを冷静に考えないといけない。
へえ。なんだか大人な対応だね。そういうふうに怒られて先生も怒ったりしないの?さっきの店員さんみたいに、「こういうものなんです!」っていうふうに。
うん、そりゃ歯科医も人間だから、怒られたら嫌だし、特にいわれのないことでそんなに怒られると言い返したくもなるよね。だからそうならないようにするのが大事。
事前に見抜くことだね。場合によっては、私たちではあなたを満足させてあげることはできないってお伝えする。歯科医側も色んな人たちと関わっているから、話せばだいたい、その人がどういうタイプの人かがわかる。
もちろん、その状態をみるのは歯科医として当然。でも歯や口だけをみているわけじゃない。全身的な状態、そしてその人の性格や背景にある環境などもみている。
そうだよ。だって歯科医は患者さんと関わりながら、その患者さんを良くするためにはどういうコミュニケーションをしたら良いかをを考える必要があるから。性格ってすごい大事。
最初に話した店員さんに怒っていたお客さんのように、いわれのないことで怒ったり、話しても全然理解してもらえない人などは、できるだけ治療に入る前に見抜くように気を付けているってことだね。
(次回へ続く)
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