この連載について
歯科医と患者さんとの間にはギャップがある。それが不満や後悔につながることも多い。歯科医の内藤は、そのギャップを埋めるため週に一度、落ち着いて患者さんと話せる時間をつくることにした。するとそこに毎週訪れるようになった小学5年生のゆめは君。内藤とゆめは君。患者さんからのご質問やご意見をもとにした2人の気さくな会話から、歯科医の常識や日常がみえてくる。歯科医と患者さんのギャップを埋め、お互いに後悔のない歯科医療を選択するための情報が満載。
内藤先生
話せる歯科医
ゆめは君
辛口な小学校5年生
先生もあんまり意識しないで使ってたんだけど、違うみたいだよ。
信用は、過去の実績などを証拠に信じることだって。それに信用によって成り立つ関係って、お金のやりとりなどがある利害関係のことなんだって。
信頼は、証拠などなくても、これからの未来にむけて期待して頼りにするということらしい。人間関係は信頼によって成り立つんだって。
なかなか難しいよね。言葉として意味がちがうから、信頼しても信用するなとか、信用しても信頼するなとか、言われたりするね。
歯科医と患者さんとの関係にも言えることだから、患者さんの立場で考えてみようか。
うん。じゃあ、患者さんからすると、歯医者さんを信頼しても信用しちゃいけないっていうのはどういうこと?
信頼は、期待を含むけど、保証は含まれないって言われているんだ。だから患者さんは歯科医に対して、期待をしても、自分が望む結果まで信じてはいけないということ。
期待しても良いけど、絶対に良い結果になる保証はない?
どれだけ期待できる歯科医でも、確実ではないよね。特に歯科医療行為は不確実性が少なからず含まれるから。そこに対して歯科医もそして患者さん自身も心得ておかなければならない。
ある程度信用から入らないといけないけど、信用と信頼を混同していると、結果が思い通りにならなかったときに裏切られた気がしてしまう。そして、先生を信用していたのにひどいってすべてを歯科医のせいにしてしまう。
なるほど。信頼は未来の結果に対する保証じゃないからか。
信頼関係が大事って、簡単に良く使われるけど、誤解もあるよね。大事なことは、信頼は、お互いの努力によって成立するものだってこと。信用による関係は、契約関係のようなものらしいよ。
ただ歯科医と患者さんとの関係って、必ず信用関係でもあるよね。お金を払って、治療を受けるんだから。契約書や同意書もあるし。それは避けられないけど、信頼関係が成り立ったうえで、信用関係を結ぶことが望ましいよね。
うん。たとえば、歯科医自身の家族なんかはそうだよね。最初に信頼関係がすでに成り立っている。
そう。多くの患者さんと歯科医とは最初に信用関係からはじまる。そして実際に会って関わるうちに、信頼関係ができてくるって感じだと思う。
あ、だから信用しても信頼するなっていうことも言われるわけか。
賢いね。信用っていうのは過去の実績などの証拠を信じることだからね。歯科医院のホームページなどで、こんな治療結果を出してるからとか、テレビや雑誌に出てるからとか、患者さんの声が良いからとか。
それは信用しても良いけど、だからってその歯科医を信頼してはいけない?
はじめは、それによって信用するしかない。でも信用関係を結ぶ前に、信頼関係が成り立ってほしい。でも患者さんがその歯科医を信頼するかは自分で判断しないといけないんだよね。
歯科医と患者さんとの間で、信頼関係が成り立ってから信用関係を結ぶことってできるの?
それが理想だし、できると信じているよ。それには、治療する前にちゃんと話し合いをしないといけないし、お互いを知らないといけない。で、最後にゆめは君に質問。
いやまあそれはそうかもしれないけど、家族でも信頼関係が成り立つには大事なことってあるよね?
(次回へ続く)
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