この連載について
歯科医と患者さんとの間にはギャップがある。それが不満や後悔につながることも多い。歯科医の内藤は、そのギャップを埋めるため週に一度、落ち着いて患者さんと話せる時間をつくることにした。するとそこに毎週訪れるようになった小学5年生のゆめは君。内藤とゆめは君。患者さんからのご質問やご意見をもとにした2人の気さくな会話から、歯科医の常識や日常がみえてくる。歯科医と患者さんのギャップを埋め、お互いに後悔のない歯科医療を選択するための情報が満載。
内藤先生
話せる歯科医
ゆめは君
辛口な小学校5年生
信用を得るためのコミュニケーションとして大事なのは、
ただたくさん話をすることではない。(→第4回へ)
普段の姿勢や態度、言動などから伝わるものを大事にしているという内藤先生。
では実際に患者さんと関わるときに内藤先生が気をつけていることとは?
話せる歯科医なのに、話をすることが重要じゃないって言ってたね?
重要じゃないってわけじゃないんだけど、ただべらべら話してたら信頼関係が気付けるのかっていったらそうじゃないってことだね。
内藤先生は、患者さんとのコミュニケーションで何か気をつけていることはあるの?
距離感ってのはなんとなくわかるけど、バランス感覚って何?
科学的なものごとの考え方や見方と感覚的なものごとの考え方や見方のバランス感覚。
そうだね。伝えるためにバランスをかえることもあるし、治療方針の決定や治療自体もあいまいで感覚的な部分て結構あるんだよね。
そう。科学って再現性があることがとても大事なんだけど、歯科治療の中には、この患者さんにはうまくいったけど、次の患者さんにはうまくいかないってことはあるね。それに、正直なところ、全く同じ色や形が再現できない場合があるんだよ。
そういう場合もあるだろうね。未熟なときほど、再現性がないと思う。でもそれだけじゃない気はするね。
まだわかっていないこともたくさんあるしね。なんで良くなったのか、なんで悪くなったのか、わからないことも結構あるよね。
わかっていないこともたくさんある中で患者さんの治療を行うのも怖いね。
そうだね。事前にはっきりわかることってめずらしいよね。だからやってみて感覚的にわかってくることって結構あるんだよ。だから、そういうあいまいな部分を受け入れることができないとしんどいくなるね。
じゃああいまいで感覚的な部分をもつことって大事なセンスなんだね。
そう思うよ。特にかかりつけの歯科医にはとても大事なセンスだと思う。
うん、いろんな人がいるね。とても科学的な説明で納得される人もいれば、感覚的な説明の方を好む人もいるよね。その人にとってちょうど良いバランスで話をするようにはしているかな。科学だけでは太刀打ちできないこともあるのが現場なんだよね。
へぇ~。そうなんだ。バランス感覚ってそういうことだったんだね。
うん。距離感ってのも大事で、話をしすぎるのも、聞きすぎるのも良くないと思うし、なれなれしくても、よそよそしくても良くないと思うからね。
そう。これが結構むずかしい。ちょうどよくってのは、とても絶妙な距離感とバランス感覚が必要なんだと思うよ。
そっか。話せる歯科医っていろいろ考えているんだね。
(次回へ続く)
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