教えて内藤先生 第5回 「話せる歯科医はちょうどよい」

この連載について
歯科医と患者さんとの間にはギャップがある。それが不満や後悔につながることも多い。歯科医の内藤は、そのギャップを埋めるため週に一度、落ち着いて患者さんと話せる時間をつくることにした。するとそこに毎週訪れるようになった小学5年生のゆめは君。内藤とゆめは君。患者さんからのご質問やご意見をもとにした2人の気さくな会話から、歯科医の常識や日常がみえてくる。歯科医と患者さんのギャップを埋め、お互いに後悔のない歯科医療を選択するための情報が満載。


内藤先生
話せる歯科医

ゆめは君
辛口な小学校5年生

信用を得るためのコミュニケーションとして大事なのは、
ただたくさん話をすることではない。(→第4回へ)
普段の姿勢や態度、言動などから伝わるものを大事にしているという内藤先生。
では実際に患者さんと関わるときに内藤先生が気をつけていることとは?

 

内藤先生
コミュニケーションって奥が深いよね?

ゆめは君
話せる歯科医なのに、話をすることが重要じゃないって言ってたね?

内藤先生
重要じゃないってわけじゃないんだけど、ただべらべら話してたら信頼関係が気付けるのかっていったらそうじゃないってことだね。

ゆめは君
内藤先生は、患者さんとのコミュニケーションで何か気をつけていることはあるの?

内藤先生
そうだね。ちょうどよさかな?

ゆめは君
ちょうどよさ?どういうこと?

内藤先生
ちょうど良い距離感とバランス感覚。

ゆめは君
距離感ってのはなんとなくわかるけど、バランス感覚って何?

内藤先生
科学的なものごとの考え方や見方と感覚的なものごとの考え方や見方のバランス感覚。

ゆめは君
患者さんによってそのバランスを変えるってこと?

内藤先生
そうだね。伝えるためにバランスをかえることもあるし、治療方針の決定や治療自体もあいまいで感覚的な部分て結構あるんだよね。

ゆめは君
あいまいで感覚的な部分?

内藤先生
そう。科学って再現性があることがとても大事なんだけど、歯科治療の中には、この患者さんにはうまくいったけど、次の患者さんにはうまくいかないってことはあるね。それに、正直なところ、全く同じ色や形が再現できない場合があるんだよ。

ゆめは君
同じようにやっていても再現できないことがある?

内藤先生
うん。全く同じ絵は描けないって感じかな。

ゆめは君
再現できないのは腕がわるいだけじゃなくて?

内藤先生
そういう場合もあるだろうね。未熟なときほど、再現性がないと思う。でもそれだけじゃない気はするね。

ゆめは君
そうなんだ。難しいんだね。

内藤先生
まだわかっていないこともたくさんあるしね。なんで良くなったのか、なんで悪くなったのか、わからないことも結構あるよね。

ゆめは君
わかっていないこともたくさんある中で患者さんの治療を行うのも怖いね。

内藤先生
そうだね。事前にはっきりわかることってめずらしいよね。だからやってみて感覚的にわかってくることって結構あるんだよ。だから、そういうあいまいな部分を受け入れることができないとしんどいくなるね。

ゆめは君
じゃああいまいで感覚的な部分をもつことって大事なセンスなんだね。

内藤先生
そう思うよ。特にかかりつけの歯科医にはとても大事なセンスだと思う。

ゆめは君
患者さんもいろんな人いるもんね?

内藤先生
うん、いろんな人がいるね。とても科学的な説明で納得される人もいれば、感覚的な説明の方を好む人もいるよね。その人にとってちょうど良いバランスで話をするようにはしているかな。科学だけでは太刀打ちできないこともあるのが現場なんだよね。

ゆめは君
へぇ~。そうなんだ。バランス感覚ってそういうことだったんだね。

内藤先生
うん。距離感ってのも大事で、話をしすぎるのも、聞きすぎるのも良くないと思うし、なれなれしくても、よそよそしくても良くないと思うからね。

ゆめは君
それも難しそうだね。

内藤先生
そう。これが結構むずかしい。ちょうどよくってのは、とても絶妙な距離感とバランス感覚が必要なんだと思うよ。

ゆめは君
そっか。話せる歯科医っていろいろ考えているんだね。

内藤先生
ただ話をする歯科医じゃないってわかってくれた?

ゆめは君
なんとなくわかりました~。

(次回へ続く)

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