この連載について
歯科医と患者さんとの間にはギャップがある。それが不満や後悔につながることも多い。歯科医の内藤は、そのギャップを埋めるため週に一度、落ち着いて患者さんと話せる時間をつくることにした。するとそこに毎週訪れるようになった小学5年生のゆめは君。内藤とゆめは君。患者さんからのご質問やご意見をもとにした2人の気さくな会話から、歯科医の想いや常識がみえてくる。歯科医と患者さんのギャップを埋め、お互いに後悔のない歯科医療を選択するための情報が満載。
内藤先生
話せる歯科医
ゆめは君
辛口な小学校5年生
うん。いや真面目な話なんだけどね。歯科医の診療は神療なんだって。
どうにもできない神様の領域が含まれるからなんだって。
いや至って真面目な話。人間の神経ってあるよね?その患者さんいわくね、神経っていうのは神の経路だと。
それで歯や口には神経がたくさん集まっている。神経がかなりの領域を占めているってことね。
そうなんだよ。神経って脳につながっていくわけだけど、顔の下半分って脳の中でもかなりの領域を占めているしね。
だから、そうじゃない場所に比べて、治療がうまくいくがどうかについては、歯科医の知識や技術というもの以外の要素、つまり神域が大きくなるんだと。
その患者さんがいわく、3分の1は歯科医の知識や技術、もう3分の1は、歯科医の優しさや誠実さなどの人間性、そして残りの3分の1が歯科医にどうにもできない神域、らしい。
歯医者さんがいくら頑張ってもどうにもならないことがあるってこと?
歯科治療をやっているとね、なぜかわからないけどうまくいくときがあったり、逆になぜかわからないけどうまくいかないときがある。これはもちろん歯科医としての未熟さからくるものもあるんだけど、それだけではない部分があるようにも感じるというか。
もちろん、ずっと言ってきているように患者さん一人ひとり違うから、皆が同じようにはいかないよね。それに患者さんが治るために一緒に頑張ってくれるかどうかっていうのも重要なことだよね。
それもそうだね。歯科医が相手にする問題は、かなり生活習慣が関わるからね。歯磨きや食生活など、日常の患者さんの意識や行動がかなり結果に影響する。それに患者さんが何か変化に対して許容したり適応する力があるかも大事。
はは。そうだよね。患者さんの中には、歯科治療による変化とか口の状態の変化を、ものすごく敏感に感じて、その違和感がずっと取れない、あるいは不調を訴えるような人もいる。逆にすごくアバウトというか、大きく変化してもすぐに慣れちゃうような人もいる。
じゃあ歯医者さんが下手でも患者さんによっては満足してくれることもあるってこと?
ほんとそうなんだよ。そういう歯科治療をある先生はおかげさん治療って言ってた。患者さんが慣れてくれるおかげってことね。
ん~、神様なのかどうかわからないけど、自分が行った治療がうまくいくかどうか、患者さんが満足してくれるかどうかっていうことは、確かに何かわからない見えない力が働いているのかなとは思ってる。
また怪しい話と思われるかもだけど、治療を行うときに、一見同じことをしていても、治そうとか、その患者さんの状態を良くしようって思って行っているのと、そうじゃないときには、結果が違ってくるんだよね。それでいて患者さんと歯科医に信頼関係があると、よりその結果が良い。
でしょ?だから、歯科医と患者さんが良い関係をつくって、歯科医がその患者さんが元気になるために一生懸命に治療して、患者さんも良くなるために一生懸命になってくれて、その結果として、神様の力なのか、見えない力が働いてくれて、良い結果につながるという感じ。
こういう見えない力を理解するということを、悟りというらしい。
さとり?これは怪しい話なのか、深い話なのか、どっちなんだろう?
悟った歯科医が行う診療は神療になる。信じるか信じないかはあなた次第です。
(次回へ続く)
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