教えて内藤先生 第70回 「歯科治療は一つの正しさだけでは決められない?」

この連載について
歯科医と患者さんとの間にはギャップがある。それが不満や後悔につながることも多い。歯科医の内藤は、そのギャップを埋めるため週に一度、落ち着いて患者さんと話せる時間をつくることにした。するとそこに毎週訪れるようになった小学5年生のゆめは君。内藤とゆめは君。患者さんからのご質問やご意見をもとにした2人の気さくな会話から、歯科医の想いや常識がみえてくる。歯科医と患者さんのギャップを埋め、お互いに後悔のない歯科医療を選択するための情報が満載。


内藤先生
話せる歯科医

ゆめは君
辛口な小学校5年生

内藤先生
悪い歯があったら治療するのは正しいと思う?

ゆめは君
え?正しいんじゃない?

内藤先生
じゃあその患者さんは別に困っていなかったとしたらどう?痛いとか咬めないとか、見た目が気になるとか、そんなことは困っていない。

ゆめは君
え?でもその歯は悪いんでしょ?

内藤先生
そう。患者さんが困るような自覚症状がなくても、悪くなっている場合は結構多い。

ゆめは君
なら治療するのが正しいんじゃない?

内藤先生
治療といっても歯を抜かなければいけない可能性が高かったらどう?

ゆめは君
できたら抜かない方が良いと思うけど。

内藤先生
その歯があることで、細菌感染が拡がったり、別な病気になる可能性を高めるとしたら?

ゆめは君
え?それなら抜く方が良いんじゃない?

内藤先生
じゃあもし、その患者さんが介護を受けているようなご高齢の患者さんだったら?

ゆめは君
それは歯を抜くかどうかと関係あるの?

内藤先生
患者さんの状況は大事だよ。悪い歯をもしすべて抜いたら、咬みにくくなる。入れ歯をしたとしても。

ゆめは君
え?そうなの?

内藤先生
うん。だから患者さんが特別困っていなかったのに、歯科医が介入したことで、その人らしい生活を歯科医が奪ってしまうことにもなりかねない。

ゆめは君
そうなんだ。

内藤先生
歯科治療の大きな目的をざっくり言ったら、悪い部分を取り除いて、取り除いた部分を何かで補う行為。

ゆめは君
たしか前にもそれ言ってたね。

内藤先生
うん。でも体の健康のために悪い部分を取り除いたら生活の質が下がることがあるってこと。誰しも入れ歯じゃない方が良いじゃない?あるいは入れ歯を支えていた歯が無くなったら入れ歯が合わなくなるじゃない?

ゆめは君
ん?どゆこと?

内藤先生
患者さんは困ってないのに咬むために重要な歯を抜くのは正しいのかって話。歯を残すデメリットより歯を抜くデメリットの方が大きいときもあるから。

ゆめは君
その場合は歯を抜くことが正しくないということね。

内藤先生
悪い歯は治療する。治療してもダメな歯は抜く。それは正しいことだけれど、その人の状況やタイミングなど、全体の条件の中で判断したときには、正しくなくなることもある。難しい話だけどなんとなく分かるかな?

ゆめは君
んー。なんとなくなら。

内藤先生
だから、実際の臨床現場での決断て、一つの方向からみた正しさだけで判断していないんだよね。もう少し全体像をみて決断している。

ゆめは君
なるほど。

内藤先生
正しいことばかりで成り立たないのが実際だね。どんな価値を優先して考えるかがとても重要。

(次回へ続く)

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