教えて内藤先生 第58回 「本当は怖いドーピング歯科治療とは?」

この連載について
歯科医と患者さんとの間にはギャップがある。それが不満や後悔につながることも多い。歯科医の内藤は、そのギャップを埋めるため週に一度、落ち着いて患者さんと話せる時間をつくることにした。するとそこに毎週訪れるようになった小学5年生のゆめは君。内藤とゆめは君。患者さんからのご質問やご意見をもとにした2人の気さくな会話から、歯科医の想いや常識がみえてくる。歯科医と患者さんのギャップを埋め、お互いに後悔のない歯科医療を選択するための情報が満載。


内藤先生
話せる歯科医

ゆめは君
辛口な小学校5年生

内藤先生
歯の治療ってね、今の生活の質を上げるために、その歯や別の歯の未来の健康を犠牲にすることがあるんだよね。

ゆめは君
え?どういうこと?

内藤先生
生活の質ってわかるかな?

ゆめは君
なんとなく。

内藤先生
たとえば、前歯がガタガタで見た目が悪かったら、それは歯を見せて笑うこともできなくなったりするよね?それで人に与える印象も変わったりするし。

ゆめは君
前歯をきれいにしたらその人の生活はもっと良くなるってことだね。

内藤先生
そう。笑顔が素敵になって笑うことが増えたり、人と接することに自信が持てたり。歯の問題だけど、心の問題にも影響してくる。だから当然その人の生活に影響してくる。

ゆめは君
たしかにね。

内藤先生
だから、その歯の治療は、とても意味のあることだと思うんだけど、その治療方法によっては、歯の寿命が短くなる可能性が高まることもあるんだ。

ゆめは君
んー。それが良くわかんない。

内藤先生
一つの例を出すね。まず前歯の歯並びで、口元の見た目を気にしている女の人がいるとしよう。それを治したいって歯科医院に来たとするよね?

ゆめは君
うん。

内藤先生
前歯を何とかしたくて来ているんだけど、その前歯をちゃんときれいな状態にするには、奥歯の状態も関係するし、全体的な治療が必要になることがあるんだよ。

ゆめは君
奥歯も治療しなきゃってこと?

内藤先生
うん。ちゃんときれいな口元にするためには、奥歯も含めて歯を動かす矯正治療をしたり、場合によっては奥歯のかぶせ物をやり直したり。

ゆめは君
そうなると大変そうだね。

内藤先生
そう。歯科医が最もきちんと治る方法を提案するとそうなるんだけどね。でもそれは費用や時間などその患者さんの状況は考えに入っていない。

ゆめは君
まあお金がなければできないこともあるよね?

内藤先生
そうだね。お金があったとしても、時間がない場合もあるんだよ。

ゆめは君
時間がない?

内藤先生
うん。もしその女の人が、就職活動中で、できるだけ早く前歯の状態をきれいにしたいという強い要望があったらどうする?

ゆめは君
そっか、奥歯を含めて、しかも矯正治療もしてたら時間が足りないってこと?

内藤先生
お、さすがだね。そうなんだよ、矯正も含めてやってたら2~3年くらいかかることもあるし、すぐには終わらない。そうなると、今を最も大事にしたい患者さんからしたらそんな期間がかかることは受け入れられない。

ゆめは君
じゃあどうするの?

内藤先生
何とか前歯だけで治す方法を選択する。歯を削ったり、場合によっては歯の神経を取ったりして。かぶせ物をすることで前歯を早くきれいにみせるような治療を。

ゆめは君
それだと何かがまずいの?

内藤先生
少し無理がある治療だからね。その歯の寿命は確実に縮まる。

ゆめは君
え?治療した歯の寿命が縮まっちゃうの?

内藤先生
そうだよ。だからそれをドーピング歯科治療と呼ぶ歯科医もいるんだよ。

ゆめは君
ドーピングって、運動選手が使って問題になる薬の?

内藤先生
うん、そうなんだけど、ここでの意味は、その歯科治療は、今の生活の質を高めるけど、将来的に歯の寿命を縮めるようなツケが回ってくるよってこと。

ゆめは君
え?こわいね。

内藤先生
そうなんだよ。でも患者さんは今が大事で良くしたいと願うし、未来のことがイメージできていないことも多い。だから歯科医はきちんと将来どうなる可能性があるかってことも含めて相談して慎重にその治療を決めないといけないんだよね。

ゆめは君
ぜひそうしてほしい。

(次回へ続く)

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