この連載について
歯科医と患者さんとの間にはギャップがある。それが不満や後悔につながることも多い。歯科医の内藤は、そのギャップを埋めるため週に一度、落ち着いて患者さんと話せる時間をつくることにした。するとそこに毎週訪れるようになった小学5年生のゆめは君。内藤とゆめは君。患者さんからのご質問やご意見をもとにした2人の気さくな会話から、歯科医の常識や日常がみえてくる。歯科医と患者さんのギャップを埋め、お互いに後悔のない歯科医療を選択するための情報が満載。
内藤先生
話せる歯科医
ゆめは君
辛口な小学校5年生
前回の話はちょっと難しかったんだけど。(→
第10回へ)
そうだよね。前回の話は確かにわかりにくかったよね。ごめん、気を付けます。
生体に調和とか顎の生理的な動きとか。よくわかんない言葉がいっぱい出てきたしね。
そっか。でもゆめは君なら、なんとなく理解できるんじゃない?
まあね。要は、その人の体に害がないってことでしょ?
そう、さすが。やっぱり小学校5年生にもなると、抽象的な概念で会話できるもんだね。
ごめんごめん。具体化すると意味がたくさんあるから、ざっくり共通点をまとめた言葉って感じかな。
じゃあ前回の話に出てきた生体に調和していないかぶせものとか、顎の生理的な動きを妨げるかぶせものとかって具体的にはどういうもの?
かぶせものの材質とか、色とか、形とか、いろんなことが関係するから、抽象化した言葉にしちゃったんだけど、今回一番言いたかったのは、このまま無理にかぶせものを入れると呼吸をするための顎の動きを邪魔する可能性があるってこと。それがもしあると体にとってとても害になるんだよ。
呼吸をするときの空気の通り道を気道っていうんだけどね。それは知ってる?
その気道が広いと呼吸しやすいし、狭いと呼吸しにくい。それは当然そうだよね?
で、下顎の位置が後ろにあるほど、舌も後ろにいくし、気道が狭くなりやすい。イメージできる?
そう。たとえば寝ているときって、筋肉がゆるむから、重力で下顎が後ろにいきやすい。その結果気道が狭くなって、呼吸しずらくなるんだよ。
あ、お父さんが寝ているときにいびきかいたり、息が止まってるって言われていることあったけど、だからか。
そうだね。そんなとき、下顎をくいっと前に出してあげたら静かになるよ。やってみたら?
うん。下顎の位置が後ろに下がると気道が狭くなって呼吸しずらくなるって理解できたかな?
それで、実は歯によって下顎の位置や動きは変化するんだよ。だから、下顎をむやみに後ろに下げすぎたり、下顎を前に出す動きを妨げたりするようなかぶせものが入ると呼吸がしずらくなる可能性がある。
呼吸しずらいんだから、それを排除して呼吸しようと下顎が動く。その力は強烈で、そんな力がかかればかぶせものも外れやすいし、他の歯にも悪い。
特に寝ているときに呼吸状況が悪くなるから、そのとき息をするために、もがき苦しむその力は意識的に制御できないからね。そりゃすごい力だよ。
こわわ。しかしかぶせもの一つで色んなことが考えられるんだね~。
そうだよ。歯科治療っていうのは、良くも悪くも、体に色んな影響を与えているんだよ。
そう考えると慎重に治療しなきゃなのが分かるでしょ?
(次回へ続く)
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