この連載について
一人ひとりの答えが違う歯科医療。そんな中、話せる歯科医は、患者さんの言いなりでもなく、自分勝手でもない。科学的な根拠も大事だけど、ときに感覚やあいまいさを優先する。ではいったいどんな歯科医が話せる歯科医なのか? 私、内藤の経験や物語をとおして、話せる歯科医をひも解いていきます。ここには、これからの歯科医療における答えの決め方のヒントがあるはずです。
私たちは人に自分の思いを
伝えるときに、言葉を使用します。
思いを伝えるための道具は
言葉だけではありませんが、
ほとんどの人が使用している
とても有効な道具であることは
間違いありません。
ただ誰もが使っていて、
誰でも使えるこの道具。
実は使い方はそんなに
簡単ではありません。
あまり意識しないかもしれませんが、
自分が感じたことなどを、
ちゃんと頭の中で
言葉にすることができますか?
そして頭の中で言葉にしたことを
実際に口に出して、
あるいは書きだして、
正確に言葉にできますか?
これは結構難しいです。
この精度をあげるには
訓練が必要だと感じます。
何だかすごいことや
心を動かされることを
感じていたとしても、
それをちゃんと頭の中で
言葉にできない。
さらに、頭の中で
何だかすごいことを
考えていたと思ったのに、
実際に口に出したり、
書きだしたりしてみると、
何だか薄っぺらい。
全然大したことない。
そんなことは良くあるんです。
だから自分の思いを
適切な言葉にして
相手に正確に伝えることは
実はとても難しいことなのです。
発する言葉によっては、
その思いが正確に
伝わらないこともあると思います。
だから私は、
相手が発した言葉を
そのまま受け取らないことが
あります。
相手から発された言葉は、
相手が本当に伝えたいことを
表しているとは限らないからです。
実際に言われたことがあります。
その言葉通りの意味に
自分が捉えていたら、
相手からそんなことを
言っているんじゃないって。
明らかにその言葉を
発しているのにも関わらず。
相手が発した言葉を
その通りに受け取っても、
相手からしたら、
伝わっていないと
感じることがあるようです。
確かに、言葉をそのまま
受け取っていても、
話がわかる人だなとは
思われません。
話していて、
すごく話のわかる人だと
感じるのは、
言葉としてこちらが
発していないのに、
自分が伝えたいことを
分かってくれる人。
たとえ間違った言葉を
使っても分ってくれる人。
そして、より分かりやすい
言葉に置き換えてくれる人。
だから私は、
相手と話をするとき、
相手が発した言葉の源泉を考え
それを受け取るように努力しています。
それができなければ
話せる歯科医ではないと
思うからです。
(次回へ続く)
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