この連載について
歯科医と患者さんとの間にはギャップがある。それが不満や後悔につながることも多い。歯科医の内藤は、そのギャップを埋めるため週に一度、落ち着いて患者さんと話せる時間をつくることにした。するとそこに毎週訪れるようになった小学5年生のゆめは君。内藤とゆめは君。患者さんからのご質問やご意見をもとにした2人の気さくな会話から、歯科医の常識や日常がみえてくる。歯科医と患者さんのギャップを埋め、お互いに後悔のない歯科医療を選択するための情報が満載。
内藤先生
話せる歯科医
ゆめは君
辛口な小学校5年生
このまえテレビで、おすし屋さんが特集されているのを見たんだけどね。
あんまり考えてなかったけど、そのテレビ見てたら、カッコいいなって思ったし、その人が握っているおすしが食べたくなったよ。
とにかくね。こだわりがすごくって。一切妥協しないっていうか。とにかくいつも自分の最高のおすしを出すって。
おすしのネタの仕込みって、その魚の状況によって少しずつ変えているらしいね。
そうそう。同じ種類の魚でも違うってやってた。微妙に塩や醤油などの量を変えるって。その魚の状態を読むって。
ん?魚の状態を読むって、なんだか歯科医が患者さんの個別性を読むことにちょっと似ている気がするね。
そうなの?高級とされている魚ほどあんまり塩が入っていかないんだって。同じ魚だからって同じ感覚でやってたら全然違う味になっちゃうって。
しかもそういうことは教科書なんかにのってなくて、教えてくれる人がいなかったら感覚的に覚えていくしかないんだって。
おもしろね。ますます歯科医の世界と似ている気がするね。歯科治療も、同じことをやっていても患者さんによって結果が違ったりするからね。
うん。違うことあるよ。たとえば、虫歯治療だって、この人は治療後にまったく痛みを感じないのに、別の人はいつまでも痛みを強く感じてしまうとか。あるいは、ちょっとのかみ合わせの変化で、肩こりや頭痛など、大きな身体の症状の変化を起こしてしまう人もいるしね。
おすしのネタみたいな個別性を読まなきゃいけないんだ?
そうだね。すべての人が同じように教科書通りいくことはありえなくて、患者さんそれぞれの個性にいかに合わせていくかが歯科医の技量でもあるよね。とても難しいけどね。
すみません。魚も人間も尊重した立場で話しているとご理解ください。
それだけではないとは思うけど、職人の要素は大きいよね。こだわりをもって妥協せずに握ってくれるおすしをお客さんは食べたいって思うだろうし、歯科医もこだわって妥協しない治療をしてほしいって、患者さんは思うだろうし。
妥協するっていうとちょっと誤解されるかもしれないけど、正直にいうと、妥協したくないけどせざるを得ないっていうのはあるかもしれない。
そうなんだ、それはちょっと気になるね。でもそろそろ帰らないとだからまた今度聞くね。
(次回へ続く)
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