話せるブログ 第62回 感性&思考「勤務医としての患者さんとの信頼関係の築き方③」

この連載について
一人ひとりの答えが違う歯科医療。そんな中、話せる歯科医は、患者さんの言いなりでもなく、自分勝手でもない。科学的な根拠も大事だけど、ときに感覚やあいまいさを優先する。ではいったいどんな歯科医が話せる歯科医なのか? 私、内藤の経験や物語をとおして、話せる歯科医をひも解いていきます。ここには、これからの歯科医療における答えの決め方のヒントがあるはずです。

聞かれたことにちゃんと答える。

これが最初に私が
気を付けていたこと。

当たり前のことのようですが、
これは結構難しいことでした。

聞かれることが
分からないこともありますし、
そもそも一つのはっきりした
答えなんてないものも
歯科医療の世界には
たくさんありますから。

でもそれをすると、
患者さんは話をしてくれるように
なります。

具体的にはまず
患者さんが本当に
話したいこと、
悩んでいること、
分かってほしいことを
理解することに努めました。

患者さんは伝えたいことを
すべて言語化できている
わけではありません。
うまく言語化できない場合には、
私が患者さんの伝えたいことを
言語化して患者さんに
返すようにします。

それによって患者さんは
私がちゃんと理解したことを
確認することができるからです。

「そうそう!
私が言いたかったことは
そういうことなんです!」
と思ってもらえるように。

そうすると患者さんは
少し心を開いてくれます。

「この歯科医、
誰だか分からなかったけど、
何だか自分の話を
分かってもらえるのかな?
じゃあこれも話してみようかなと。」

そうして患者さんに悩みや要望を
話してもらえるようになったら
今度はなぜ今そうなっているのか、
現状について説明します。

現状について説明するときは
できるだけその患者さんにとって
わかりやすい言葉と絵で
イメージしてもらえるようにしました。

患者さんが理解でき、
腑に落ちれば、
「なるほど!」となり、
その歯科医の話をもっと
聞いてみようかという
気持ちにもなるはずです。
こうして信頼感は少しずつ
積み上がっていきます。

そこで今度は解決するために
一体何が必要なのかを説明します。
ただ解決策を伝えるときには
注意しないと、ちょっとずつ
積み上げてきた信頼感は崩れます。

なぜなら歯科医が当たり前と
思っていることでも、
患者さんの中では、
なんでそれが自分の悩みを
解決することになるのかが、
つながっていない場合が
あるからです。

だから私は自分の提案が、
なぜその患者さんの悩みや
要望に応えることに
なるのかをちゃんと
伝えるように気を付けています。

そして、
治療方針と計画の全体像を
伝えます。
そのイメージを共有してから
個々の細かい治療選択を
話し合っていきます。

本当にその患者さんのことを思って
こういうプロセスを踏んでいれば、
患者さんはだんだんと
「この歯科医に任せてみよう。」
と信頼してくれるようになるはずです。たぶん。

(次回へ続く)

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