この連載について
歯科医と患者さんとの間にはギャップがある。それが不満や後悔につながることも多い。歯科医の内藤は、そのギャップを埋めるため週に一度、落ち着いて患者さんと話せる時間をつくることにした。するとそこに毎週訪れるようになった小学５年生のゆめは君。内藤とゆめは君。患者さんからのご質問やご意見をもとにした２人の気さくな会話から、歯科医の常識や日常がみえてくる。歯科医と患者さんのギャップを埋め、お互いに後悔のない歯科医療を選択するための情報が満載。
内藤先生
話せる歯科医
ゆめは君
辛口な小学校５年生
前回の話だと、治療途中をみせてくれる歯医者さんは治療がうまいって言ってたよね？
そうだね。ちゃんとやっているからそのプロセスをみせることができるんじゃないかな。で、見せてくれる先生はやっぱり上手だよ。
たしかに、みせてくれなかったら口の中で何されているかわからないもんね。
何されているかわからないっていう状態で治療を受けていることが。
そういう患者さんも結構いるよね。その歯科医を信頼しているからなら良いんだけどね。
昔はとくにそうだったみたいだよね。今みたいにネットもスマホもなくて、みんな情報がない。だから選択肢もないし、比較もない。
じゃあ今は何されているかわからないまま治療を受ける患者さんは少なくなってきたの？
そうだね。ネットとかで調べてくる患者さんには少ないね。
たとえば、虫歯があるから削って治療が必要ですって歯科医に言われたとしても、本当に削る必要あるんですかっていう感じ。明らかに見える場所じゃなかったり、痛みなどの自覚症状がない場合はとくに。
そりゃ何にも困ってないなら、いきなり削られたくないもんね。
それが当然だよね。削る治療など、侵襲（しんしゅう）や苦痛を伴うような治療は、納得できる理由がなければされたくないもんね。
だから不思議なのは、虫歯があるって歯科医が言うだけでちゃんと信じて治療をうけて、さらに何をされたから良くわからず終わっているってこと。
歯科医を信じすぎているし、自分の歯や口のことに関心がうすいことが多い。
前回、良い治療をしてるかの結果は、時間がたってからわかるって言ったよね？
で、結果が良いって時間が経っても良い状態を維持できているってことなんだけど、そのためにはかならず患者さんの協力が必要になるんだよ。
患者さんの協力？歯医者さんだけが頑張っても良い結果はでないってこと？
もちろん、歯科医もできるかぎり正確で精度の高い技術があることは大事なんだけど、治療の結果は患者さんの意識や技術レベルをあげたり、協力を得ることでさらに良いものになるんだよ。
へえ。結果を良くするのは歯医者さん個人の治療技術だけじゃないんだね？
そう。だから治療結果が良い歯科医は、それを知っているから、歯科医個人の治療技術だけじゃなくてチームを組んだりして患者さんのサポート体制を整えているんだよ。
そっか。じゃあ歯科医を信じすぎていて、あまり自分の口や歯に関心のない人は協力してもらいにくいってこと？
歯科医の立場からすると、信じてほしいし、信じてもらってた方がとてもやりやすいんだけど、信じすぎもよくないよね。歯医者にいって治したらもう大丈夫って意識になってしまう人が多いから。
どれだけその状態を維持できるかが勝負。患者さんの協力しだいで大丈夫とも言えるし、大丈夫じゃないとも言える。まあ最近は色んな情報が出回っているから結構歯科医を疑っている人が増えてきているけどね。
疑われているのもかわいそうだね。基本は信じてもらいたいんじゃない？
そうだね、疑いもせず信じすぎない、お互いに頼り過ぎないちょうどよい関係が理想だね。
（次回へ続く）
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