この連載について
歯科医と患者さんとの間にはギャップがある。それが不満や後悔につながることも多い。歯科医の内藤は、そのギャップを埋めるため週に一度、落ち着いて患者さんと話せる時間をつくることにした。するとそこに毎週訪れるようになった小学5年生のゆめは君。内藤とゆめは君。患者さんからのご質問やご意見をもとにした2人の気さくな会話から、歯科医の常識や日常がみえてくる。歯科医と患者さんのギャップを埋め、お互いに後悔のない歯科医療を選択するための情報が満載。
内藤先生
話せる歯科医
ゆめは君
辛口な小学校5年生
様子みましょうって歯科医からすると、色んな意味が含まれた言葉だって言ったよね?
そうだね。便利なんだけど、歯科医はその言葉の使い方にはとても気を付けなければならない。
適切な意味があって、様子をみようってなら良いんだけど、意味がなく様子みましょうって言わないようにしないといけない。
あると思う。様子みましょうっていうのは、医療用語で言ったら、経過観察って言い方をするんだけどね、経過観察をするのは、この先どうなるかってことがその時点で判断できない場合にするんだよ。
どうなるかがわからないから、そのまま何もしないで良いか、何かをしなきゃいけないかの判断がつかない?
そう。だから経過を診ながら、どうするかを判断していきましょうってことなんだ。
逆に言ったら、どうなるかがわかるなら、そのまま何もしないか、何かをするべきかの判断をしなければならないってこと。
う~ん。何が言いたいか良くわからないから具体的に教えてほしいんだけど?
たとえばね、子供のときの歯並びとか咬み合わせの問題に対して、意味のない様子みましょうはやっちゃいけないと思っている。
子供の時はとくに、どう導くかによってかなり変わる。状態が良くない方向にいっているのに、様子みてたって良い方向に向かわない。それに子供はどんどん成長していて、どのタイミングで介入するかで大きく変わるから。
うん。それはあるね。子供の時にいかに良い状況に導いてあげるかがとても大事。ちゃんと勉強していて経験を積んでいる歯科医だと、子供の口の中の状態をみて、その子の未来の状態を予想しているんだ。
うん、未来を予想している。乳幼児期(0~6歳)の状態をみて、学童期・思春期(7~19歳)はどんな状態で、青年期(20~39歳)はどうで、壮年期(40歳~64歳)はどうなって、高齢期(65歳~)はどうなっていくか、それを予想するんだ。
完璧には難しいけど、だいたいの傾向があるからね。だから乳幼児期や学童期に、簡単に様子みましょうは言っちゃいけないと思う。そのときの影響は、大人になってから大きくなってくるから。
そうなんだ?様子みてたって良くならないってわかっているなら教えてほしいね。それになんとかできることがあるならそれも教えてほしい。
そういうことをわかったうえで、どこまで何をするかっていうのは、その子やご両親と相談して決めることだけどね。それで相談した結果、今は様子みましょうってことならそれは良いと思うけど。
もし何の説明や相談もなく、とりあえず様子みましょうって言われたら?
歯科医の無知からくる、その場しのぎの様子みましょうの可能性が高いね。
(次回へ続く)
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