この連載について
一人ひとりの答えが違う歯科医療。そんな中、話せる歯科医は、患者さんの言いなりでもなく、自分勝手でもない。科学的な根拠も大事だけど、ときに感覚やあいまいさを優先する。ではいったいどんな歯科医が話せる歯科医なのか? 私、内藤の経験や物語をとおして、話せる歯科医をひも解いていきます。ここには、これからの歯科医療における答えの決め方のヒントがあるはずです。
歯科医療の治療方針に
絶対正しい一つの答えなどない。
私はそう思っていますので、
それぞれの患者さん、
あるいは同じ患者さんでも、
そのタイミングによって、
治療方針は変わります。
これが絶対正解だってものはない
ということです。
でも先日、ある患者さんに
こんなことを言われたんです。
「正解がないのは困ります。
私は決めることが苦手なので、
これが正解だって言ってほしいんです。」
お気持ちは良くわかります。
その通りですよね。
もし、専門的知識を持っていない
決めることが苦手な迷っている患者さんに、
正解はなくてどれを選んでも自由ですとか、
自分が選んだものが正解ですとか言ったら、
さらに迷わせてしまうだけですからね。
ただ私が言っている正解がないというのは、
誰にとってもどのタイミングにおいても通用する
一つの正解があるわけではないということ。
逆に言うと、
その時その患者さんの正解はある。
だからそれを見つけていくということ。
私たち歯科医は歯科医療のプロならば、
今のあなたに最適な治療方針はこれですと、
伝えられなければなりません。
もし治療方針の一般論だけを語り、
後は患者さんに選ばせるだけだとしたら
それはプロではありません。
ただ最適な治療方針をみつけるためには
患者さんと話し合う必要があります。
たまにお任せしますと言われますが、
お任せされるとしても、
何がその患者さんにとって良いかを
こちらが決めるためにも、
患者さんの事情を教えてもらわなければなりません。
家を買うとか、
携帯を買うとか、
そんなときでも、
自分の事情を考慮して、
どうしようか決めますよね。
その時営業マンが、
こちらの事情を何も考慮せず、
とにかく良いものや、
自分に必要のないものまで、
すすめてきたら嫌ですよね?
同じように、
歯科医が患者さんの事情を無視して、
勝手に決めた治療方針を押し付けたら
患者さんは嫌ですよね?
(医療の場合、患者さんは少しその感覚は鈍くなるようですが)
冒頭の決めることが苦手だとおっしゃっていた
患者さんも、これまで何度も
歯科医から色んな提案があったようなのです。
でも決められなかった。
なぜなのかを良く聞くと、
この治療方針が良いと言われても、
やっぱり自分の事情があって、
それを考えると受け入れられなかったようなのです。
それで決めかねてこれまで来てしまったと。
だからこれが正しいって決めるためには、
患者さんの事情を聞いてよりそい、
その患者さんが最も納得できる治療方針を
みつけていく必要があるのです。
(次回へ続く)
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