話せるブログ 第92回 感性&思考「患者さんの本当の訴えは患者さんの事情に隠されている」

この連載について
一人ひとりの答えが違う歯科医療。そんな中、話せる歯科医は、患者さんの言いなりでもなく、自分勝手でもない。科学的な根拠も大事だけど、ときに感覚やあいまいさを優先する。ではいったいどんな歯科医が話せる歯科医なのか? 私、内藤の経験や物語をとおして、話せる歯科医をひも解いていきます。ここには、これからの歯科医療における答えの決め方のヒントがあるはずです。

私は治療方針を立てるときに、
患者さんの事情を良く聞きます。

なぜなら患者さんが本当に訴えたいことは、
その患者さんの事情に隠されていることも
多いからです。

歯科医師として、
患者さんの困っていること、
例えば、
歯が痛いとか、
歯に穴が開いてるとか、

見た目が悪いとか、
よく咬めないとか、
そういった訴えを聞くことは
当たり前のことです。

そしてその訴えに対して、
いつから、どこが、
どんなふうにとか、
掘り下げて聞いていきます。
それは患者さんの病態を知るために、
重要な情報だからです。

どんな痛みかとか、いつからとか、
患者さんの自覚症状の経過を聞いて、
どこがどのように悪いのかを
診断します。

歯科医師なら必ずこれはやっています。
だって歯科医師になるときには
必ずやるように教えられてくる部分ですから。

でも、実際に歯科医師として
患者さんに向き合ったときに、
病態把握のための情報収集だけでは
不十分だと感じます。

確かに患者さんは、
痛いとか、穴が開ているとか、
そういったことをきっかけとして
歯科医院に来院されているかもしれませんが、
実はそれだけではない、
本当の訴えがある場合も多いからです。

例えば、先日、
入れ歯が合っていないので
もっと合う入れ歯をつくりたい
という訴えの患者さんがいました。

診させてもらうと、
確かに入れ歯がちゃんと合っているとは
言えませんでしたが、
でもこれまでわりと長くその入れ歯で
過ごされてきたようなんです。

これまでその入れ歯を
使ってきたのにも関わらず、

入れ歯が合わないと歯科医院に来院されたんです。

なぜでしょうか?

良く話を聞いてみると、
大きな理由がありました。

それは、
仕事で役職が上がって、
人前で話す機会が増えたから。

これまでも抱えていた口元への
コンプレックスがより気になりだしたので、
何とかしたいということだったんです。

この事情こそが、
患者さんがわざわざ歯科医院に
行こうと決心した本当の訴えなんです。

だからこの訴えにこたえることが
私たちが歯科治療をする目的になります。
だから私は患者さんの事情を良く聞くのです。
なぜなら、それによって治療方針や治療計画が
変わってくることもあるからです。

この事情を知らなければ、
本当にこの患者さんにとって
良い治療方針も治療計画も
立てることはできません。
でも患者さんはこのような事情を、
こちらが聞かなければ
言ってくれないことも多いです。
(事情によって治療方針や治療計画が変わるとは

思っていないからかもしれませんが。)
歯科医師はこの患者さんの事情を
ちゃんと聞くことについては
あまり教えられませんので、
意識して聞いていくことが必要です。

私自身もこれまで患者さんの事情を聞くことを
教えられたことはありません。
ただその患者さんが本当に喜んでくれたり、
納得できる歯科治療は何なのかを
一生懸命考えていたら、その人の人生の事情を
どんどん聞くようになったというのが正直な所です。

患者さんが本当に訴えたいことは、
その患者さんの事情に隠されている。
そして、
その患者さんにとって、
最も納得できる治療方針や治療計画は、
その事情を教えてもらうことで、
見えてくるものだと言えます。

(次回へ続く)

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。


Warning: Undefined variable $user_ID in /home/rous/hanaseru-naito.com/public_html/wp-content/themes/agenda_tcd059/comments.php on line 145

最近の記事 おすすめ記事

最近の記事

PAGE TOP