この連載について
一人ひとりの答えが違う歯科医療。そんな中、話せる歯科医は、患者さんの言いなりでもなく、自分勝手でもない。科学的な根拠も大事だけど、ときに感覚やあいまいさを優先する。ではいったいどんな歯科医が話せる歯科医なのか? 私、内藤の経験や物語をとおして、話せる歯科医をひも解いていきます。ここには、これからの歯科医療における答えの決め方のヒントがあるはずです。
私たち歯科医は、
患者さんの抱えている
問題を解決するために、
最善を尽くしますが、
必ずしも結果が
良いときばかりではありません。
うまくいくときもあれば、
うまくいかないときもあります。
歯科医と患者さんとの関係を
考えたとき、
うまくいっているときに
良好なことは当たり前です。
問題はうまくいかないときです。
歯科医と患者さんの間で
信頼関係を持続するためには、
うまくいかなかったときの
態度がとても重要だと
思っています。
歯科医が責任逃れのような
言い訳や説得に終始したり、
患者さんが歯科医を責めるような
批判や追及を行うなどすると、
関係性が悪くなる恐れがあります。
歯科医と患者さんは
敵対するものではなく、
同じ目的にむかって、
協力していく仲間です。
うまくいったときは
ともに喜びを分かち合い、
うまくいかなかったときは、
お互いとてもつらい中でも、
じゃあどうやって
そこから良い方向に向かうのか
前向きに考えていかなければ
なりません。
歯科医の立場からすると、
自分の治療がうまくいかないとき
とてもつらいものです。
正直、患者さんの身体的負担や
経済的負担が大きいときほど、
より心が痛くなります。
やっぱり負担をかけた分
それ以上に喜んでほしい。
治療はどんなに最善を
尽くしてもうまくいかない
こともありますし、
歯科医は、
予期できない不確実性も
含まれる中で、決断や治療を
行っています。
だから、
歯科医療ってそんなものだって
どこかで割り切らなければ
歯科医の心はとても
苦しくなっていくことは事実です。
それでもやっぱり
うまくいかなかったときの
患者さんの不満ややり切れなさは
歯科医が真摯に
受け止めなければならないと思います。
先日、ある患者さんにこんなことを
言われました。
「先生の良いところは、
人の言っていることを
吸収できるところよね。
だいたいは、また変な
うるさいこと言っているって
あんまり聞いてくれないから。」
その患者さんは、
私にとって、
とても耳の痛いことも
たくさん言うんです。
治療してもなかなか
満足してもらえない。
でもその患者さんは
さらにこう言うんです。
「私は嫌ならすぐ歯医者を
かえてきたからね。
今まで色んなところ通ってきた。
先生も今は私のことを
うるさいおばさんだって
思っているかもしれないけど
何年か経ったら、
絶対成長してるのよ。」って。
この患者さんとは
もう3年近い
お付き合いになります。
うまくいかないときに
患者さんとどう向き合うのか。
歯科医として、
とても大事なことだと思います。
そして逆に、
患者さんの立場からすると、
その歯科医が信頼できるかが
良く分かるときかもしれません。
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