話せるブログ 第30回 物語「アゴが歪んできた!?低いかぶせ物が引き起こした問題」(第1話)」

この連載について
一人ひとりの答えが違う歯科医療。そんな中、話せる歯科医は、患者さんの言いなりでもなく、自分勝手でもない。科学的な根拠も大事だけど、ときに感覚やあいまいさを優先する。ではいったいどんな歯科医が話せる歯科医なのか? 私、内藤の経験や物語をとおして、話せる歯科医をひも解いていきます。ここには、これからの歯科医療における答えの決め方のヒントがあるはずです。

「近くの歯科医院で、
ブリッジをしたんですが、
すごく痛くて全然咬む事が
できなかったんです。
インプラントならいけますか?」

そう聞いてきたのは、
数年前に一度、
初診で当院に
来院されたことがある患者さん。
名前は吉沢さん。
細身で華奢な体型をした40代の女性。
そのときは、
初診時のカウンセリングのみで
治療を受けることはなかった。

それから数年が経過し、
今回吉沢さんは
インプラントを希望しており、
中垣歯科医院で行っている
属を使用しないインプラントに
興味を持ち、再度来院された。

まだ日本では、
金属を使用しないインプラントを
取り扱っている歯科医院は少ないため、
吉沢さんは、インターネットで探し、
県外からわざわざ訪れたのだった。

吉沢さんの状態はというと、
右下の第一大臼歯が欠損している。
そこにインプラントをしたいとのことだった。

「今の状態のままインプラントを
入れることはお勧め出来ません。
ブリッジをして咬めなかったのなら、
今の状態でインプラントをしても
同じようなことが起こる可能性があります。」

初診時、一通り診査を終えた後、
私は、吉沢さんにそう伝えた。

「じゃあどうしたら良いのでしょうか?」

吉沢さんの表情は困惑していた。
歯が失くなってしまった部位に、
単にインプラントをすれば
咬めるようになるんじゃないかと
期待して来院された吉沢さんにとって、
それは理解しにくいことだったかもしれない。

「右側の咬み合わせが
低い状態が続いているので、
咬む位置が右にズレてきています。」

「え?ズレている?」

「はい、下のアゴが
右にズレてきています。
顔を正面から見たときも、
少しアゴが右に歪んでいるように見えます。
しかもその影響で、
右下の前歯2本の歯並びが
変わってきています。」

「え?そういえば前より
下の前歯の歯並びが
悪くなったとは思っていました。
それも関係あるんですか?」

「はい、すべての人が
そうなるわけではないですが、
ありえます。」

「どうしてそうなって
しまったのでしょうか?
そんなこと今まで
言われたことありませんでしたが・・・。」

吉沢さんは、
自分の身に起こってきている
変化をまだ信じられない様子だった。

なぜそんな変化が
起こってきたのだろうか?

(次回に続く)

※ここでの物語はすべて実話に基づいていますが、登場する方々の氏名は仮名であり、個人が特定されないように配慮をしている点をご理解ください。

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