患者さんに知って頂きたいこと

歯の寿命は基本的に減点方式


歯というものは、基本的にはどんどん「悪く」なっていくものです。それぞれの歯は最初に持ち点が決まっており、減点方式で徐々に持ち点が下がっていくようなイメージです。

ここで重要なことは、人によって最初の持ち点が違うこと。そして、その持ち点が減るスピードもそれぞれ異なるということです。ですから歯科医療の大きな目的は、

できるだけ高い持ち点で始まること
持ち点が減るスピードをできるだけ遅くすること

になります。

治療のせいで持ち点が減る?


しかし実のところ、この持ち点が減るスピードを、他でもない歯科治療が早めているケースもあります。一つ例を挙げるなら、「ブリッジ」という治療。これは、悪くなった歯を抜歯し、その両側の歯を支柱とした上で、そこに一体型の人工歯をかぶせる治療です。

手術も必要なく、比較的安価だということで人気があるのですが、この治療には「支柱にするために両側の健康な歯を削らなければならない」という大きなデメリットがあります。見た目が良くなる、よく噛める、というメリットを得ることはできますが、一方で、この治療のために削られた「両側の健康な歯」はどうなるでしょう。これがきっかけで虫歯になりやすくなったり、負担がかかったりして、寿命が短くなってしまいます。つまり、両側の歯の持ち点が減るスピードが早まっているということです。

もちろん私はブリッジ治療を否定したいわけではありません。こういった歯科治療の特性をしっかり理解し、今どんなメリットを得て、これから起こり得るどんなデメリットを受け入れていくのか。それを自分の人生全体を通してイメージし、納得した上で治療しましょう、ということを言いたいのです。このイメージを分かりやすく伝えることが、話せる歯科医の一つの役割だと思っています。

治療方針は「歯の持ち点」だけで決まらない


上で書いたように、人生全体をみたときに、歯科医療の大きな目的として、

・できるだけ高い持ち点で始まること
・持ち点が減るスピードをできるだけ遅くすること

があります。しかし、歯科医療の目的はそれだけではなく、

・今の生活をできるだけ健康的で豊かなものにする

という目的もあります。

・歯の寿命は延びるけど、見た目がよくない。
・歯は削らずにすむけど、食事がおいしくない。
・歯は使えるけど、治療が原因でほかの部分が悪くなった。

これらも困るわけです。だから、最も納得できる答えとは、「歯の持ち点」だけで決まるわけではないということです。

「あなただけの治療方針」にたどりつく



患者さんが、何をもっとも大事にしているのか? 今どうなりたくて、将来的にもどうなっていることをイメージしているのか? これらは患者さん一人ひとり違います。また、同じ患者さんでも、タイミングやそのときの気持ち感情によって違ってきます。

だから、「納得できる答え」にたどり着くには、歯科医が患者さんの想いや価値観までを知る必要があるのです。そのためには、患者さんに信用して話してもらえる歯科医でなくてはなりません。「話せる歯科医」というのは、「患者さんに何でも話してもらえる歯科医」という意味が込められています。

歯科医と患者さんは、問題に対して一緒に闘う仲間であり、治療方針決断の責任をも共有する共同体だと考えています。そんな関係を理解しあった上で、「あなただけの治療方針」にたどりつく支援をしていきます。患者さんの想いや価値観を理解し、その内容に沿って自分の専門的知識やスキルを繋ぎ合わせていける歯科医。それが私の目指す、「話せる歯科医」です。

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