歯科医療の現状について
「効率」や「スピード」が重視される世界
歯科医が歯や口に対して治療を行えば、良くも悪くも様々な効果が現れます。場合によっては、患者さんの人生に影響を与えることにもなります。ですから本来歯の治療というものは、とことん慎重に進めるべきものなのです。
しかし今の歯科業界は、「効率」や「スピード」が重視される世界です。一日に多くの患者さんを治療しなければならず、一人ひとりにかけられる時間はとても短い。だからこそ、治療内容やメリットやデメリットについて患者さんが「完全に理解している」という状況は、珍しいように思います。
もちろん「喫緊の課題」「目の前の悩み」を、できるだけ早く解決したい、という気持ちはわかります。でも、私は敢えてこう言いたいのです。
今の治療が、10年後、20年後にはどんな影響を与えるかをご存知ですか? と。
「歯」と「家」は似ている?
歯科医療の選択は、「住む家をどうするのか」の選択に似ています。痛い所などを部分的に治すのは、どこか傷んだ部分だけを修理することに似ています。今見える問題点を全体的に治すのは、全体的に古くなったものを新しくするリフォームに似ています。健康や豊かさを意識した治療は、より快適な空間を新たに創るリノベーションに似ています。
そして、そういった選択肢の中から「自分で答えを決めたい人」も、「答えを決めてほしい人」も、「一緒に答えを決めたい人」もいると思います。いずれにしても、患者さんの人生に寄り添う気持ちで、関わり方や答えの決め方も柔軟に変化させながら、患者さんができるだけ後悔しない納得できる答えを見つけ、それをちゃんとできる。それが「話せる歯科医」だと思っています。
世の中に「話せる歯科医」が増えたなら、歯科医と患者さんとの間に生まれる不満や後悔は少なくなると私は信じています。